2007 Fiscal Year Annual Research Report
ナノチューブ添加複合材料の力学的性質におけるナノサイズ効果
Project/Area Number |
18560665
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩谷 正俊 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10196363)
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Keywords | 力学的性質 / 破壊靱性 / 小角X線散乱 / シンクロトロン放射光 / クレーズ / 複合材料 / カーボンナノチューブ / 気相成長炭素繊維 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNT)を添加した高分子複合材料の力学的性質に関して近年多数の研究報告がなされているが,CNTの添加によって必ずしも明瞭な力学的性質の向上が得られるとは限らないのが現状である。その理由として,CNTの凝集体が破壊の起点となり得ることや,試験片形態が力学的性質の評価結果に影響することなどが挙げられる。本研究では,CNT,気相成長炭素繊維,カーボンブラック(CB)などを添加した高分子複合材料の変形・破壊過程におけるシンクロトロン放射光小角X線散乱時分割測定を行って,破壊の前駆構造の形成・成長・クラックへの転化挙動を解明し,CNTの有する高いアスペクト比及びナノサイズがもたらす本質的な効果を明らかにした。CNT及びCBを添加するといずれの場合も高分子の破壊靭性は増大するが,CNTの添加はより大きな効果をもたらした。 CBはクレーズが生成するサイトの数を増加させる効果があるが,CNTはその高いアスペクト比に起因して,クレーズが成長するために必要な仕事を増加させる効果があることが明らかとなった。表面ノッチを導入したフィルムは側面ノッチを導入したフィルムと比較して著しく大きなCNT添加効果を示した。Essential work of fracture法によって,破壊に要する全仕事を,新たな表面を形成するために必要な仕事と塑性変形に必要な仕事に分離して評価した。また,試験片の変形を有限要素法によって解析した。それらの結果,表面ノッチを導入したフィルムは側面ノッチを導入したフィルムと比較して塑性変形領域の割合が著しく大きく,これに起因して両試験片形態間でCNT添加効果に顕著な相違が生じることが明らかになった。以上のように,CNTが有する高いアスペクト比及びナノサイズに起因する本質的強化効果があること及びその効果が有効に発現する材料形態があることが明らかになった。
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