Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 仁 兵庫県立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30047633)
花木 聡 兵庫県立大学, 大学院工学研究科, 助手 (20336829)
小西 啓之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 関西研究所, 副主任研究員 (50354981)
水木 純一郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 関西研究所, 放射光科学研究センター長 (90354977)
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Research Abstract |
21世紀に入り社会資本の充実が叫ばれる一方,急速に進む高齢化・財政の逼迫により,鋼構造物などの保守管理は困難になりつつある.しかし,我が国の腐食対策費は約4兆円もの巨額に相当する.社会資本を構築する鉄鋼材料の長期耐久性を確保することが,戦略的に構造改革を進めている我が国の国家的使命であると言っても過言ではない.そのために,水,酸素,腐食性物質,汚染物質等と鉄鋼の相互作用により進行する腐食を基礎的に理解し対応策を検討しなければならない. 本研究では,環境(水,酸素,腐食性物質,汚染物質等)と鉄鋼材料の反応を、ナノスケール(原子配列レベル)でその場観察することにより、鉄鋼の腐食劣化機構の解明を行うことを目的とする.そのために,SPring-8およびPhoton Factoryなどの大型放射光施設を用いた.具体的には,水溶液に覆われた(あるいは水溶液中の)鉄鋼材料表面におけるFeイオンと鋼中に添加されているその他の金属(Cr,Ni,Al,Si等)イオンおよび腐食環境から供給される亜硫酸ガスや窒素酸化物,塩化物イオンとの反応,さらには各腐食段階における反応生成物の構造を,白色光やイメージングプレートなどを用いた精密なXRD(X線回折)およびXAFS(X線吸収微細構造)解析によりその場でリアルタイム評価する.平成18年度には,鋼への添加元素としてAlに注目し、塩化物イオンとの反応を主として調査した。その結果,水溶液膜下で生成する腐食生成物は,初期にはAl複合Fe酸化物であるが,反応が進むにつれて構造がオキシ水酸化鉄に変化することが明らかとなった.このことから,初期にAlを中心とした酸化物が生成し,その後Al含有オキシ水酸化鉄が形成されることにより腐食環境遮断効果を発現するものと思われる.また,腐食因子としての塩化物イオンはオキシ水酸化鉄の構造をβ相にする効果を有し,Alの複合によりβ相の保護性が向上すると予測している.次年度からの研究継続により,その他の金属イオンおよび環境由来の腐食因子の影響を検討する予定である.
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