2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体内でのチタン合金の安全確保のための材質劣化のキャラクタリゼイションと機構解明
Project/Area Number |
18560702
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 潤一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90329095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 賢一 早稲田大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 客員教授(専任扱い) (80308262)
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Keywords | Ni-Ti合金 / 生体材料 / マルテンサイト変態 / 水素脆化 / 引っ張り変形 |
Research Abstract |
【背景】我々はNi-Ti超弾性合金の水素脆化機構を、昇温水素放出分析から調べている。水素脆化機構の解明には、Ni-Ti超弾性合金の破壊を引き起こす変形に最も関与する水素を特定する必要がある。変形に関与した水素は、昇温水素放出挙動に反映されると考えられるため、本研究では、予め水素チャージしたNi-Ti超弾性合金を引張変形させた際の昇温水素放出挙動について検討した。 【実験方法】試料は市販の直径0.50mmのNi-Ti超弾性合金(マルテンサイト変態開始応力:500MPa、逆変態開始応力:270MPa、引張強度:1250MPa)を600番のSiC研磨紙で表面を磨き、アセトン洗浄したものを用いた。電解水素チャージ条件は、25℃の0.9%NaCl水溶液中において、電流密度10A/m2、チャージ時間2時間とした。水素チャージした試料を、大気中(25℃)において引張-除荷(ひずみ速度8.33x10-4s-1)した後、昇温速度10℃C/hで昇温放出水素分析をおこなった。 【結果】母相の弾性域まで引張-除荷した試料では、水素放出挙動に変化はほとんど見られなかった。一方、マルテンサイト相の弾性域まで引張-除荷した場合、100-200℃で昇温放出される水素が多くなる傾向があった。また、応力誘起マルテンサイト変態と逆変態を繰り返した場合においても、同様に低温度域で放出される水素が多くなる傾向が認められた。この低温度域で放出される水素は、チャージ後大気中に放置すると安定化し、200-400℃で昇温放出されるようになる。Ni-Ti超弾性合金の低温度域で昇温放出される水素は、相変態を含む変形に強く関与すると考えることができ、変形前に比べ変形後は、より不安定な存在状態になっている可能性が示唆された。
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