2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体内でのチタン合金の安全確保のための材質劣化のキャラクタリゼイションと機構解明
Project/Area Number |
18560702
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 潤一 Waseda University, 理工学術院, 教授 (90329095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 賢一 九州工業大学, 工学部, 准教授 (80308262)
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Keywords | Ni-Ti合金 / 生体材料 / マルテンサイト変態 / 水素脆化 / 引っ張り変形 |
Research Abstract |
0.9NaCl水溶液中におけるNi-Ti超弾性合金の水素吸収挙動に及ぼす環境因子の影響について検討した結果を以下に示す。 試料は市販の直径0.50mmのNi-Ti超弾性合金ワイヤーで、試験溶液に0.9%NaCl水溶液(pH=5.3-5.5)を用い、pHの影響を検討するため、乳酸を用いてpH=2.0に調整した。自然浸漬電位からカソード方向に電位を掃引した。試験溶液中で様々な電位および定電流密度(10A/m2)で2時間保持した後、昇温水素放出分析によって水素吸収量を測定した。水素吸収量は室温から600℃の間で放出された水素量から求めた。 腐食電位は試験溶液の温度が上昇すると貴な方向へシフトした。水素発生が支配的になる電位は、溶液温度25、37℃において約-0.9V、60℃において-0.7V、pH=2.0の溶液で-0.4V付近であった。水素を吸収する臨界電位は溶液温度が高くなると貴にシフトした。pH=2.0の溶液中で臨界電位は-0.4Vであった。これはpH=2.0における腐食電位(-0.15V付近)に近く、水素吸収の危険に対する裕度が小さい。溶液温度が高くなると吸収量は増加し、電流密度が約1A/m2より高い場合に水素吸収が見られた。pH=2.0では電流密度が1A/m2以下の電位であっても水素吸収が見られた。一定の電流密度10A/m2で保持した場合、溶液温度が上昇すると水素吸収量は増加した。水素発生量が同じであるにも関わらず、溶液温度が高い場合に吸収量が増加したのは、試料中への水素の拡散が早いためだと考えられる。本研究では、電気化学的挙動に基づいて、0.9%NaCl水溶液中におけるNi-Ti超弾性合金の水素吸収挙動を、定量的に示した。この結果、水素吸収挙動は環境の変化に対する感受性が高く、実際の使用環境において水素吸収する可能性が示唆された。
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