2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体内でのチタン合金の安全確保のための材質劣化のキャラクタリゼイションと機構解明
Project/Area Number |
18560702
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 潤一 Waseda University, 理工学術院, 教授 (90329095)
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Keywords | Ni-Ti合金 / 生体材料 / マルテンサイト変態 / 水素脆化 / 引張変形 |
Research Abstract |
本年度は、主に口腔・生体内を模擬した環境中におけるTi合金及びNi-Ti超弾性合金の安全確保のための材質劣化のキャラクタリゼイションと機構解明について研究を行い以下の知見を得た。 口腔内環境を模擬した中性フッ化ナトリウム水溶液中においてα+β型Ti合金及びβ型Ti合金が水素吸収する臨界電位は、純Tiやα型Ti合金のそれに比べて卑な電位であることが明らかになった。印加電位の卑化とともに水素吸収量は増加したが、増加量はTi合金の種類に依存した。また、純Tiは水素発生電位と水素吸収電位は、ほぼ一致するが、他のTi合金は必ずしも一致しなかった。このことから、Ti合金の水素吸収は、添加元素によって表面の酸化皮膜の状態が変化したことで影響を受けたと考えられる。また、純Tiやα型Ti合金の昇温水素放出挙動は印加電位に影響されることがあるが、α+β型Ti合金やβ型Ti合金ではほとんど影響されなかった。このことは純Tiやα型Ti合金は水素添加条件によって水素の存在状態が変化しやすいことを示唆している。 生体内の炎症反応を模擬した過酸化水素含有生理食塩水中におけるNi-Ti超弾性合金の材質劣化挙動は、pHよりも添加する酸の種類によって大きく変化することが明らかになった。本合金の安全確保のためには、従来の評価環境を見直す必要性があることを意味している。 Ni-Ti超弾性合金の生理食塩水中の水素吸収臨界電位は、純TiやTi合金のよりも貴な電位にあり、pHの低下や温度上昇により水素吸収しやすくなることが明らかになった。また、定電位下で水素吸収した場合と定電流密度下で水素吸収した場合とで、昇温水素放出挙動が異なることがわかり、水素の添加方法を改めて議論する必要性が示された。
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