Research Abstract |
Al合金ダイカスト平板中に存在する破断チル層の寸法及び向きを,超音波顕微鏡を用いて検出するための技術を確立した.すなわち,破断チル層の酸化膜部分は音響画像中で高輝度領域,また破断チル層の本体部分は低輝度領域として観察されることを明らかにした.この技術を用いて所定の位置に破断チル層を内在させた試験片を製作し,曲げ試験及び引張試験を行い,それぞれの強度に及ぼす破断チル層の影響を定量的に明らかにした.特に,張試験において,破断チル層が引張方向に対して直交する方向に向いている場合,引張強さは破断チル層酸化膜の面積にほぼ比例して低下していくことを明らかにした. 次いで,水袋を用い,引張試験中にその場超音波測定を実施した.すなわち,水袋中に探触子を挿入して試験片側面に押し付け,超音波を試験片内部の破断チル層酸化膜に集束させ,破断チル層からの反射波を引張試験中に測定した.その結果,破断チル層からの反射波の向きが引張試験の途中で逆転することを明らかにした.このことから,最終破断に先立って,破断チル層酸化膜が母相から剥離し,き裂を生じたものと推定した. その場超音波測定の結果より,破断直前には,破断チル層酸化膜にき裂が存在するとして,破壊力学的解析を行った.その結果,破断時の臨界応力拡大係数が求められたが,母相の破壊靭性値より低い値を示すこと,酸化膜寸法が小さな範囲では,酸化膜寸法の減少に伴って臨界応力拡大係数は低下傾向を示すことが分かった.これらの結果について,き裂の寸法効果,酸化膜の剛性の影響,などの点から考察を行った.
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