Research Abstract |
Al合金ダイカスト平板の超音波顕微鏡観察を行い,破断チル層の分布を観察した。次いで,中央部近傍に破断チル層を内在させた試験片を製作し,疲労試験に供した。種々の応力振幅で疲労試験を行ってS-N線図を得たが,その疲労寿命は大きくばらついた。そこで,応力振幅65MPaの測定結果について,破断要因ごとに疲労寿命を整理した結果,破断チル層以外の微細組織を起点として破断した試験片では疲労寿命が長く,破断チル層を起点として破断した試験片では低疲労寿命を示すことがわかった。更に,破断チル層寸法に従って疲労寿命は低下していくこと,破断チル層が外部に露出している場合のほうが内部に破断チル層が存在する場合に比べて疲労寿命の低下割合が大きいこと,などが明らかになった。 次いで,水袋を用い,疲労試験中にその場超音波測定を行った。すなわち,所定の疲労回数ごとに疲労試験機を停止させ,破断チル層からの反射波を測定した。その結果,粗大な破断チル層を内在する試験片で測定した破断チル層からの反射波ではその向きに変化は認められなかったが,これは超音波の測定間隔が広すぎたためと考えられた。そこで,測定間隔を短時間で測定した結果,試験片によっては疲労の途中でその向きが逆転する場合のあることが分かった。これより,疲労過程中に破断チル層が母相から剥離し,き裂を生じたものと推定した。 超音波測定の結果より,疲労試験においても途中で破断チル層が母相から剥離してき裂を生じ,成長していくものと推定された。疲労試験中は一定の応力振幅であることから,最終破断時のき裂寸法は破断チル層寸法に依存せず,一定となるものと推定された。そこで,破断面から最終き裂寸法を評価し,臨界の応力拡大係数を求めた結果,先に引張り試験で求めた臨界応力拡大係数の値とほぼ同一の値を得た。
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