Research Abstract |
希土類金属による耐食性向上メカニズムを解明するため,基材となるMg材料の種類を変えるとともに,表面処理法としてこれまで用いてきた化成処理法に加えて陽極酸化法を適用して研究を行った.得られた試料はSEM等による表面断面観察,XRD分析,XPS分析,及び電気化学的測定法により評価した.また,恒温槽を用いたJIS準拠の塩水浸漬試験により,得られた試料の耐食性を評価した. Mg金属と同様に,各種実用Mg合金(AZ31,AZ61,AZ91,AM60)においても,硝酸Mgと希土類金属硝酸塩を同時に含む処理液を用いた化成処理により,その耐食性が特異的かつ劇的に向上することが確かめられた.処理を行った材料表面には酸素を含む層がみられたが,その厚さは高々1μm程度と非常に薄く,XRD分析による相の同定はできなかった.一方,XPS分析によって,処理したMg金属表面からはMg,希土類金属,酸素が,AZ31表面からはMg,希土類金属,酸素とAlが検出され,被膜が複合的な酸化物であることが示唆された.陽極酸化処理したMg金属表面には10μm程度の酸化物層が形成されており,やはり硝酸Mgと希土類金属硝酸塩の混合溶液中で処理した場合にMg金属の耐食性が著しく向上した.処理後のMg金属をXRD分析したところ,処理前に見られなかったピークが複数検出されたが相の同定はできず,被膜がMgと希土類金属の複合的な酸化物であることが示唆された.これらの結果,および電無化学的測定結果から,希土類金属によるMg材料の耐食性向上は表面に形成される複合的な酸化物によることが明らかになった.さらにMg合金の化成処理では,耐食性向上の最適条件が合金の種類によって異なり,また上述のように表面酸化物中にAlが検出されたことから,基材中のAl等も表面酸化物の性状に影響を及ぼすことがわかった.
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