Research Abstract |
シリカ(SiO_2)担持Pt-Sn触媒を用いてエステルのモデル物質である1-ブチロラクトンの水素化反応を行った。Ptの担持率を5WT%一定としてSn添加壁を変化させSn/Pt比の効果を検討した。触媒の粉末X線回折パターンから,Snの添加量がSn/Pt<1(モル比)の低添加領域では,Ptの金属粒子のみが観測され,PtSn合金相やSn金属あるいはSn酸化物相は生成しなかった。1<Sn/Pt<2の中間領域では,PtSnの合金相が生成し始めPtSn合金とPt金属槽の両者が共存することがわかった。Sn/Pt>2の高担持率領域では,PtSn合金のみが観測され担持したPtがほとんど合金に変換されていることがわかった。この3つの領域において1-ブチロラクトンの水素化反応を検討した。Sn/Pt1の低担持領域およびSn/Pt>2の高担持領域では,ほとんど活性を示さなかった。狭い範囲ではあるが,1<Sn/Pt<2で高収率,高選択率で水素化生成物である1,4-ブタンジオールが生成した。以上の結果より,エステルの水素化反応において,PtとPtSn合金の両相が共存することが,高活性・高選択性の条件であることが示唆された。以前の研究で,水素の活性化には,Pt成分が必要でPtSn合金が生成すると急速に水素分子解離能が低下することがわかっている。実際に水素吸着実験の結果よりSnの添加により水素吸着能が抑制されることがわかった。また,エステルなどのカルボニル化合物の活性化には,Sn成分が重要な役割を果たしていることがわかっている。Snの添加によりカルボニル基の酸素原子を介してSn(あるいはSn^<2+>)と結合し,C=O2重結合が活性化されることがわかっている。従って本結果は,水素分子を活性化するPt成分とカルボニル基を活性化するSn(あるいはSn^<2+>)成分が近距離で共存する時に水素化活性が発現することがわかった。PtSn合金のSn上に1-ブチロラクトンがカルボニル酸素を介して化学吸着し,また,Pt表面上で水素分子か解離吸着し原子状水素種が生成する。原子状水素種が化学吸着した-ブチロラクトンのカルボニル基を攻撃することで,1,4-ブタンジオールが選択的に生成すると考えられる。 このようにエステル化合物の水素化反応には,2つの機能を調和して発揮させることが重要であることがわかる。来年度においては,新規な触媒調製法を考案し,表面の水素活性化成分(Pt)とカルボニル基活性化成分(Sn)の状態を精密に制御したい。より高度は表面制御によりさらに高活性な触媒の合成を目指す。ひいては低温活性触媒の創成も可能で環境負荷低減触媒の提案にもつながるであろう。
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