Research Abstract |
平成18年度に得られた結果より,Pt金属相とPtSn合金相が共存することで,γ-ブチロラクトンから1,4-ブタンジオールへの難還元反応が容易に進むことがわかった。そこで,あらかじめPtのみを担持したPt/SiO_2を調製し,逐次的にSnをPt上に選択的に担持することで,Pt粒子表面にPtSn合金様の構造を生成せしめ,エステル基の還元反応に有効かどうかを検討した。 還元活性化したPt/SiO_2を塩化スズ水溶液に浸漬すると,水溶液中のSn^<2+>イオンは,SiO_2担体上には全く吸着せず,Pt金属粒子表面に選択的に吸着する。浸漬前後の溶液中のSn^<2+>イオンの濃度を測定することで,Pt上へのSnの吸着量を求めた。得られた触媒の粉末X線回折パターンからは,Pt相のみが観測されバルクには影響せず,表面のみ合金化(あるいは2元化)したことがわかった。γ-ブチロラクトンの水素化反応結果より,バルクPt量との比でSn/Pt=0.1だけSnを導入すると,水素化活性が著しく増加した。Pt/SiO_2の調製法によっては,Snの添加により20〜50倍に活性が増大した。水素吸着実験およびX線光電子分光法により表面のSn/Pt比=1〜2の範囲で急激に1,4-ブタンジオールの収率が増大することを見出した。水素および一酸化炭素の気相吸着実験から,少量のSnを吸着することで,吸着量が著しく低下し,逐次吸着法で効果的にPt表面をSnで修飾し,エステル基の還元反応に有効な表面が得られた。以上の結果より,エステル基の還元に適した構造は,PtSnのバルク合金ではなく,Sn/Pt=1〜2である局所的な表面構造があれば良いことがわかった。すなはち,PtとSnがより近接した局所構造がエステル基を認識する活性サイトであることが明らかとなった。
|