2006 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生態系を利用した地球環境問題対策技術の評価ツールの構築
Project/Area Number |
18560764
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多部田 茂 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教授 (40262406)
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Keywords | 海洋生態系モデル / 炭素収支 / 人工湧昇流 / 難分解性有機物 / 炭素窒素比 |
Research Abstract |
海洋生態系における炭素や窒素の循環をシミュレーションするための生態系モデルを構築した。低次生態系の窒素循環を扱うときに広く用いられているKKYSモデルをベースとし、植物プランクトンの分解実験に基づいて構築されたPDP ((Phytoplankton Decomposition Process)モデルを参考にして拡張した。つまり炭素が海洋表層から深層に輸送される生物ポンプの効率には、有機物の分解が重要なプロセスであると考えられるので、有機物を易分解性(POM)と難分解性(SR-POM)の2種類に分けるとともに、バクテリア(BAC)を独立したコンパートメントとして扱うこととした。また、KKYSでは窒素循環のみが扱われているのに対し、各コンパートメントの炭素/窒素比をパラメータとして導入し、炭素循環と窒素循環の双方を解くこととした。人工湧昇流を対象とする場合には、表層に運ばれる底層水は栄養塩濃度も高いが無機炭素濃度も高いため、基礎生産の効果を除けばCO2を大気に放出することになる。この効果も考慮して正味の炭素収支を計算するために、無機溶存炭素(DIC)のコンパートメントを導入した。ただし、大気-海洋間の炭素フラックスは湧昇や基礎生産などによって表層のDIC濃度が変化した分をただちに補償すると仮定した。モデルの感度解析を行い、光合成速度と有機物の分解速度が重要なパラメータであることがわかったので、これらについて、海水を用いた生産・分解実験の結果を用いてパラメータを調整した。構築したモデルとオリジナルのKKYSを用いて同一条件の計算を行ない、観測値との比較検討を行い、分解過程を詳細に記述することによってモデルの精度が向上する可能性のあることがわかった。また、構築した生態系モデルを海域の流れや成層を再現する物理モデルと結合し、人工湧昇流を対象とした実海域の計算を行った。
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