2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18570016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
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Keywords | 周期ゼミ / 素数周期 / 進化プロセス / 氷河期 / 交雑 / 同時発生 / 絶滅限界 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
周期ゼミは、アメリカ合衆国の東部から中西部にかけて分布するセミで、13年および17年の素数の周期で大発生することで有名である。吉村(代表者)は、1997年に周期ゼミの新しい進化仮説を提唱した(Yoshimura 1997)。この仮説は、氷河期による気候変動を起因とした歴史仮説で、これら3つの特徴を合理的に説明できる点で、広く評価された。周期ゼミの進化起源に関する吉村仮説(吉村2005「素数ゼミの謎」で解説)は、言葉による説明で、数理的な検証がない。そこで、本研究では、周期ゼミの進化プロセスの数理モデルを構築して、数値シミュレーションによりその可能性を検証する目的で研究をした。つまり、本研究の目的は、周期ゼミの特徴の素数周期の確立を数理的に再現し、素数周期の進化ファクターを特定することである。 本研究での目的のために、まず、周期ゼミの進化プロセスを以下の2つのステージとして考えた。 (1)周期性の獲得プロセス:氷河期到来による寒冷化により、温度依存で、5-10年の間で年数の決まっていなかった成長速度が、10-20年と長期化したために、死亡率が増大して、繁殖成功度が極端に低下する。そのため、突然変異により周期性を獲得した個体の子孫が有利になり、周期性が進化する。 (2)素数周期の確立:10年から20年の周期性のあるブルードが、発生地域で出会い、交雑して発生年がずれてしまい、個体数を減少させていく。そして、同時出現率の低い素数周期のみが、高い個体数を存続していく。素数周期の高い個体数により、他の非素数の周期は、素数周期と出会うと、頻度依存の交雑のために殆どすべての個体が交雑してしまい、絶滅する。 今年度の研究では、この2つ目の素数周期の確立プロセスを決定論的な数理モデルの数値計算により確認した。また。また、素数周期の成立するパラメータから、その成立が絶滅限界でのみ起こることを示した。さらに、多数の非素数などが存続するパラメータ領域での個体数密度にギャップがあることを示した。つまり、すべての非素数の周期の絶滅限界では密度が一様に低下していくが、その絶滅限界の外側で、素数周期の密度が高くなる条件があることを示した。また、13年や11年に素数周期ではその境界付近に絶滅領域があり、素数周期の成立条件が一般の絶滅限界の外側に存在することを示した。
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