2007 Fiscal Year Annual Research Report
珪藻の酸素発生光化学系2複合体の精製と表在性蛋白の結合様式と機能の解析
Project/Area Number |
18570049
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
榎並 勲 Tokyo University of Science, 理学部, 教授 (40084305)
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Keywords | 光合成 / 珪藻 / 光化学系2複合体 / 酸素発生系 / 表在性蛋白 / 凍結融解法 / チラコイド膜 / PS2 core |
Research Abstract |
珪藻は海洋、淡水中に生息する植物プランクトンで熱帯雨林に匹敵する光合成をすることが知られており、水域圈における最も重要な一次生産者である。珪藻の光合成のしくみを解明することは、水域圈における炭素循環及びエネルギー循環を知る上でも最重要な課題の一つである。しかし、珪藻は珪酸質の固い殻に包まれているため細胞破壊が難しく光合成の生化学的研究は皆無の状態であった。 我々は、昨年度、珪藻細胞が凍結融解により簡単に破壊されることを発見し、高い酸素発生活性をもつ光化学系2複合体(PS2)の部分精製に世界で初めて成功した。 この珪藻PS2には、紅藻タイプの4種の表在性蛋白に加え、これまでに報告のない新規な表在性蛋白が結合していた。これらの珪藻PS2の諸性質をまとめ本年度にヨーロッパの専門雑誌に論文を掲載した。 さらに、本年度この珪藻の新規表在性蛋白をコードしている遺伝子をクローニングしその全配列を決定した。その結果、この新規表在性蛋白はチラコイド膜を通過するペプチドをもっており、間違いなく酸素発生に関与する表在性蛋白であることを示した。 また、珪藻PS2をBlue-Native PAGEにかけることにより、PS2 coreを精製することに成功した。この珪藻PS2 coreには、他の植物種のものに比べ、約2倍のクロロフィルaが結合していることを明らかにした。これは、弱い光強度の下でも珪藻が生育するためにアンテナサイズを大きくしたものと考えられる。 さらに、珪藻PS2から5種の表在性蛋白の精製にも成功したので、再構成実験により各表在性蛋白の結合様式と機能を明らかにする実験を行いつつある。 水域圏における最も重要な一次生産者である珪藻の光合成のしくみを明らかにすることは、食糧問題やエネルギー問題にも関連する重要課題であり、本研究において珪藻の光合成の生化学的研究への道が開かれたことの意義は大きいと考える。
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