Research Abstract |
【目的】 硬骨魚類のウロコは,構造面,機能面,さらに進化学的な側面からも骨と類似した器官である。すなわち,骨と同様に,破骨細胞と骨芽細胞が共存し,I型コラーゲンを主とする基質にハイドロキシアパタイトの結晶構造としてCaが沈着し,さらにそこから血中にCaが供給されている。そこで,硬骨魚類(キンギョ)のウロコを骨のモデルとして捕らえ,昨年は破骨細胞の分化や機能に関わる遺伝子を単離し,その発現状態を調べた。本年度は,再生ウロコを用いて骨芽細胞の分化や機能に関わる遺伝子を単離し,その発現状態を解析した。 【結果】 ウロコの再生過程を観察するために,まず,ウロコ抜去後の形態的変化を調べたところ,抜去後3日目には元のウロコが存在した場所に,未分化な骨芽細胞の集塊が出現し,7日目には骨芽細胞が一層に並んだウロコの原型が出来上がり,その後ハイドロキシアパタイトの結晶化が進むことにより,抜去前のウロコに類似した硬いウロコが形成されることが明らかとなった。また,再生過程でウロコには隆起線と呼ばれる成長線ができるが,ウロコが元の大きさになるまでは,その成長線は1日1本ずつ規則正しく外側に形成されることを明らかにした。 次に,再生過程の各ステージで発現していると予想される骨芽細胞の分化に関わる遺伝子,Runx2, Dlx5,Osterixと骨芽細胞の機能遺伝子,Alkaline Phosphatase, Type-I collagen, Osteocalcinの各遺伝子をクローニングし,その配列を決定した。また,単離した遺伝子の発現をウロコの再生過程を追ってreal time-PCR法で定量的に解析するとともに,whole mountのin situ hybridization法を用いて,組織学的な側面からの解析も行った。
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