2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒゲムシと化学合成細菌の共生:宿主細胞による細菌の支配の解明に向けて
Project/Area Number |
18570057
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
笹山 雄一 Kanazawa University, 環日本海域環境研究センター, 教授 (30018999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福森 義宏 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (60135655)
金森 正明 金沢大学, 自然科学研究科, 講師 (20324064)
松野 あきら 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60032629)
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Keywords | ヒゲムシ / 共生細菌 / イオウ酸化細菌 / α-グルコシダーゼ活性 / 細胞内分布 / 毛細血管 |
Research Abstract |
本年はタイトルにある通りの研究結果とその背景にある研究結果の2種類を得た。まず共生細菌は、ほとんどが生菌であり、それらは細菌を共生させているバクテリオサイトの細胞内でも栄養貯蔵細胞側にある毛細血管の近くに分布していることが明らかになった。また、リソゾームによって極く少数の共生細菌が消化されているが、それらも毛細血管の近くに認められた。すなわち,バクテリオサイトで起きる種々の化学反応はすべて毛細血管側で行われる可能性が高いと思われる。また、毛細血管そのものをインディアンインクによって立体的に浮かび上がらせることにも成功した。これらは現在、論文として発表すべく準備中である。またヒゲムシ類では共生細菌の数がハオリムシに比べて少なすぎることから、環境中から栄養を得ているのではないか、という説があった。本研究の一環として、それを調べると、体前半部で有機物の多い海底の泥に接している体表にα-グルコシダーゼ様活性を見出した。このことは、泥の中の多糖類をグルコースまで持って行き、それを体表から吸収する可能性を示唆している。この結果はZool.Sci.誌に投入稿し受理された。一方、共生細菌はこれまで16S rRNAの配列からはイオウ酸化細菌とは断言できなかったが、細菌のゲノム上にイオウ酸化に関わる塩基配列(aprA、soxB)を見出し、明らかにこの細菌がイオウ酸化細菌であることを証明した。但し、この細菌はヒゲムシの生息海底に自由生活をしているが、他の一般的な細菌と比べて分布や生息数がヒゲムシの分布と特定の関係にあるとは言えない結果を得た。このことは、ヒゲムシが発生初期にこの細菌と共生関係に陥る時は、それぞれが厳密に相手を区別していることを意味している。この結果は、Microbes Environ.誌に投入稿し受理された。 他に、ヒゲムシのヘモグロビンに関する論文も発表した。
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