2008 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ微小脳における性的二型神経回路網とその機能の解明
Project/Area Number |
18570065
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木村 賢一 Hokkaido University of Education, 教育学部, 教授 (80214873)
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Keywords | 昆虫 / 行動学 / 脳・神経 / 遺伝子 / ショウジョウバエ / 性行動 / 性決定 |
Research Abstract |
本研究では、ショウジョウバエ微小脳の高次中枢神経回路網に注目し、構造上の性差の存在を明らかにし、性行動における機能を解明することを目的とする。Fruitless(Fru)タンパクを発現するニューロン群は、雄の交尾行動を制御する神経回路網に関わっていると考えられる。Fru発現ニューロンの形態および投射領域を網羅的に調査し、脳地図作成を進めてきた。同定されたFru発現ニューロン群が、交尾行動をどのように制御しているか明らかにするために、脳の一部を雄化したモザイク雌を形成し、雄の交尾行動を開始するために必要なニューロン群の同定を試みた。その結果、脳後方背側領域に存在する特定のニューロン群P1が雄化することにより、雌において雄特異的な交尾行動が開始されることを見いだした。P1ニューロン群について、中枢投射領域における入出力部位を特定するため、前シナプス領域に蓄積されるシナプトタグミンをヘマグルチニン(HA)で標識し、P1ニューロン群に強制発現させた。その結果、P1ニューロン群は両側性に投射し、前大脳領域に出力域があることが示され、様々な入力情報を高度に処理し運動系へ情報を伝達する介在ニューロンであることが示唆された。P1は雄特異的に存在するニューロン群であり、この雌雄差形成には雌特異的な細胞死が関与する。この性特異的細胞死が、性決定因子によりどのように制御されているか調査した。その結果、雌では性決定因子の一つDoublesexの雌型タンパクが発現することにより、細胞死が誘導されていることが示された。一方、細胞死を逃れた雄のP1ニューロンでは、Fruタンパクが発現することにより、正常な投射を行うことができるようになることが示された。このように、2つの性決定因子が協調して働いて、雄と雌で異なる脳の神経回路を作り出し、雄と雌の行動の違いを保証していることが明らかにされた。
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Research Products
(9 results)