2007 Fiscal Year Annual Research Report
行動補償の神経基盤-神経系の可塑性についての研究-
Project/Area Number |
18570072
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加納 正道 Ehime University, 理工学研究科, 准教授 (80183276)
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Keywords | コオロギ / 空気流感覚 / 尾葉 / 逃避行動 / 行動補償 / 可塑性 / 巨大介在神経 |
Research Abstract |
フタホシコオロギは空気流刺激に反応して逃避行動を行うが、その行動は刺激源からより遠ざかる方向へと解発される。空気流を感じ取る機械感覚毛が存在する1対の尾葉の片側を除去されたコオロギは、空気流刺激に対して間違った方向へ逃避を行う。しかしながら、尾葉切除後約14日間、自由に動き回れる状態で飼育すると、逃避方向は正常個体レベルまで補償的に回復する。回復の程度はその期間の歩行量に依存する(Kanou and Kondoh,2004)。 本年度(平成19年度)は、昨年度の結果からも強く支持された行動補償に関する「歩行時に自分が作り出す空気流による残された尾葉への自己刺激が補償的回復に必要である」という我々の仮説(Kanou et. al.,2002)をさらに直接的に証明するために、人工的な自己刺激空気流を作り出す装置を開発した。これはスチロール球の上に背板を固定された片側尾葉切除後のコオロギをおき、コオロギの歩行時にはスチロール球が回転するようにしたものである。コオロギはこの上で歩行するが、固定されているため静止歩行となる。この時、自己刺激空気流は生じない。この状態で、コオロギの歩行開始に合わせて人工の空気流刺激を与える(偽自己刺激)。すなわち、この装置を用いることにより歩行とそれによって生じる自己空気流刺激とを分離することができた。この偽自己刺激を、本来の自己刺激と同じ方向から与えながら飼育すると逃避方向の回復、すなわち行動補償を再現することができた。しかしながら、本来の自己刺激とは異なる方向から与えた場合、回復は見られなかった。このことは前述の仮説の妥当性を改めて強く支持するものである。
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Research Products
(12 results)