Research Abstract |
本研究の目的は,東アジアの複雑な地史的変遷を経て成立した日本列島の淡水魚類相について,多数種を対象とした比較系統地理学のアプローチから,その成立過程と遺伝的多様性を明らかにしていく研究プログラムの基盤を構築することである. 本研究は3年間で,(1)伊勢湾および琵琶湖・淀川流域の淡水魚類を対象とした比較系統地理の先導的研究を行うこと,(2)将来にわたり利用可能なデータベースシステムのプロトタイプを構築すること,(3)今回および既存のデータを用いてデータベースを試運用することをめざす.遺伝子マーカーとしては,データの蓄積性や比較の簡便さから,ミトコンドリアDNA塩基配列を選んだ. 初年度は,(1)の比較系統地理解析のためのDNA分析試料の採集と解析を大きく進め,(2)のデータベースシステム(GEDIMAP)の基本設計および基本形の作成に成功した. まず比較系統地理解析においては,コイ科魚類を中心に14種約1400個体のミトコンドリアDNA塩基配列分析を行い,比較的単純な地理的分断(伊吹-養老-鈴鹿-布引山系)で隔てられた2地域(およびその周辺域)の集団構造について比較を行った.その結果,集団構造には4ないし5つのパターンが認められた.成果は平成18年度の日本魚類学会で口頭発表し,一部のデータを用いた論文・総説の公表を行った.また複数の論文を準備中である. データベースシステムは,アパッチサーバ上で,SQLデータベースサーバとPHP5によるプログラミングを基盤として構築した.ミトコンドリアDNA配列の頻度や地理的分布に関する情報を,水系,分類群,文献の各データベース,および外部データベースと関連づけ,ウェブブラウザーにより,入力,検索・閲覧,解析,地図表示などが行える基本システムを作成した.これまで一部の既存データを入力し,システムの改善を進めてきた.
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