2006 Fiscal Year Annual Research Report
深海底に広がるキタクシノハクモヒトデ高密度個体群の系統地理学的研究
Project/Area Number |
18570099
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 敏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究員 (70222263)
|
Keywords | 種分化 / 個体群 / 遺伝子交流 / 棘皮動物 / クモヒトデ類 / 地理的分布 / 深海 |
Research Abstract |
本年度は材料の入手に重点をおいて研究調査を開始した.キタクシノバクモヒトデならびにその亜種とされているエゾクシノバクモヒトデ標本を入手するために,独立行政法人水産総合研究センター所属の研究船若鷹丸に乗船し福島県から青森県の太平洋岸において水深約100-1000mの範囲でクモヒトデ類を採集し,標本は形態による同定およびDNAの抽出が可能なエタノールにより固定した.クモヒトデ類標本は他に,日本海区水産研究所,のとじま水族館,北海道大学の協力を得て,日本海の数カ所ならびに北海道釧路沖からの標本を入手することができた.またさらに,既存の標本を整理することにより,少なくとも形態観察や分布範囲の確定に用いることができる,青森県〜岩手県沖などからの固定標本を集めることができた. これまでに,両種ならびに同属の近縁種を含め,同定作業を進めつつ,形態学的な差異やそれぞれの種の分布範囲について検討を行ったところ,キタクシノバクモヒトデが分布しているこれらの海域からは,この亜種の他にも同属とされているクシノバクモヒトデ,ホソクシノバクモヒトデ,キヌクシノバクモヒトデなどの近縁種が分布していることが判明した.また,キタクシノバクモヒトデには,これまで採集地点によって体の大きさの違いがあることは知られていたが,大きさだけではなく形態や色彩の変異もある可能性が示唆され,遺伝的な構造を研究する上で,分子による分析だけではなく,形態学的にも詳細に研究を進め地理的な変異を分析する必要があると考えられた.遺伝子解析については,具体的なデータはまだ得られていないが,クモヒトデ類で得られている既存の情報の収集とともに予備的な実験を開始したところである.
|