2007 Fiscal Year Annual Research Report
NF-κB/IKKβと二重特異性ホスファターゼを介した炎症と発癌のレドックス制御
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18570136
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鎌田 英明 Hiroshima University, 大学院・医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10233925)
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Keywords | レドックス / がん / 炎症 / IKKβ / 酸化ストレス / NF-kB / MAPキナーゼホスファターゼ |
Research Abstract |
炎症は発癌の主要な要因の一つであるが、炎症と発癌の連関における分子機構はほとんど不明である。この機構の解明のために、炎症の制御に重要な役割を有するNF-κB/IKKβ系と、炎症および細胞増殖で重要な役割を有するMAPキナーゼ系に着目した解析を行った。とくに腫瘍壊死因子(TNFα)に応答したNF-κB/IKKβ系とMAPキナーゼ系とのクロストーク機構についての解析を行った。まず、NF-κB/IKKβ系が抑制されている状態ではTNFαは細胞死を誘導するが、このときに大量の活性酸素(ROS)が細胞内に蓄積される。このROSはMAPキナーゼホスファターゼの活性を抑制することによりJNKの持続性の活性化を誘導するが、さらにJNKの下流ではユビキチンリガーゼ系を介したカスパーゼの活性化により細胞死が誘導されることが判明した。興味深いことにMAPキナーゼホスファターゼなどの二重特異性ホスファターゼと同様にチロシンホスファターゼファミリーに属するPTENも、TNFαに応答して産生されたROSにより活性が制御されていることが見いだされた。ところがPTENの下流で機能するAktやPDK1はカスパーゼにより分解されてしまうために、PTENを介したROSのシグナルはブロックされてしまう事が判明した。すなわちNF-κB/IKKβ系はROSの産生を制御することによりMAPキナーゼホスファターゼとカスパーゼの活性化により細胞死を亢進し、この結果として生じる組織障害が発癌を亢進すると考えられた。
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