2007 Fiscal Year Annual Research Report
ATP合成酵素における回転の発生と回転方向の制御機構
Project/Area Number |
18570139
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
木原 昌子 (岩本 昌子) Nagahama Institute of Bio-Science and Technology, バイオサイエンス学部, 准教授 (70252715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 隆之 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (80367903)
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Keywords | 分子モーター / ナノマシン / 生体エネルギー |
Research Abstract |
ATP合成酵素は,細菌細胞膜,ミトコンドリア内膜,葉緑体チラコイド膜にあって,プロトン駆動力により回転しながらATPを合成/分解しているモーター酵素である.平成19年度は,本酵素の回転制御の機構を明らかにするため,大腸菌βサブユニット変異酵素とその復帰変異酵素の回転の性状を詳細に解析した.また,昨年度までに単離されたγサブユニットの変異酵素を詳細に解析した. βサブユニットのSer174Phe変異酵素とSer174Phe/Ile163Ala復帰変異酵素がATP分解によりサブユニット回転する様子を直接観察した.Ser174Phe変異酵素ではATP分解あるいは生成物遊離のステップにおける停止が見られたが,Ile163Alaを加えた復帰変異酵素ではそれが解消された.Ile163とSer174は,触媒残基であるLys155/Thr156とGlu181/Arg182の間をつなぐαヘリックスBとβシート4に位置する.構造計算によるとIle163とPhe174の相互作用がAla163とPhe174で見られなくなることから,ヌクレオチド結合と共に閉じたαヘリックスBとβシート4の構造が生成物遊離と共に開くことが,連続的な回転を伴う触媒作用に必要であることが実験的に示唆された. また,γサブユニットのMet246Lys変異によって酵素活性が低下していた.立体構造でMet246の近傍と考えられるMet23の変異酵素とは異なり,正電荷のアミノ酸によりエネルギー共役が損なわれることはなかった.むしろ,正電荷および負電荷を持つ比較的小さなアミノ酸の導入によって酵素の分子集合が低下した.アミノ末端側とカルボキシル末端側のヘリックスが形成するcoiled-coil構造が局所的にしてサブユニット回転が妨げられ,酵素活性が低下している可能性があった.
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