2006 Fiscal Year Annual Research Report
分子置換法を用いた視覚機能における光受容体機能の総合的理解
Project/Area Number |
18570152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 啓雄 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60314176)
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Keywords | ロドプシン / 光 / タンパク質 / 視覚 / G蛋白質 / ノックイン |
Research Abstract |
脊椎動物の視覚情報伝達系には明暗視を担う桿体系と昼間視を担う錐体系が存在し、独立の分子群が関与している。本研究では、これらの過程で細胞内外において、どんな反応がどの時間にどのように起きているのか分子レベルで記述することを目指した。具体的には、ジーンターゲティングによる分子置換(ノックイン)が可能なマウス網膜をモデル系として、視覚の基本反応過程を生物物理学的レベルで理解することを試みた。その結果、以下の知見を得ることができた。(1)光受容蛋白質と視細胞の光感受性:界面活性剤で可溶化した溶液状態では野生型とE122Q変異ロドプシンの光感受性に差はなかったが、マウス視細胞外節膜中では、E122Qの方が光感受性が約0.9倍低かった。(2)メタII中間体の生成・崩壊速度は生理的条件の視細胞外節中において、E122Q変異ロドプシンの方が約10倍速かった。また、メタIII中間体の崩壊速度は、E122Q変異ロドプシンの方が約2倍速かった。 (3)E122Q変異ヤウスのメタI中間体とメタII中間体は、野生型と同様に熱平衡状態を形成する。平衡の偏りは野生型よりも約0.8倍メタIIが減少する方向にシフトすることがわかった。また、これに対応して変異ロドプシンのGタンパク質の活性化効率は野生型の約0.8倍であった。(4)吸引電極法によるとE122Q変異マウス桿体の光感受性は野生型の約0.7倍低かった。(1-3)の結果から、この違いは光感受性とG蛋白質活性化効率の積で表すことができる。すなわち、視細胞の応答特性に対する光受容蛋白質の性質個々の寄与分を実験的に示すことができた。さらに、これらの違いが医学・人間工学に与える影響を検討するため、霊長類のロドプシンをクローニングし、その性質をウシやマウスのロドプシンと比較検討している。
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