2006 Fiscal Year Annual Research Report
マウス心臓弁形成過程における増殖因子HB-EGFによる細胞増殖抑制機構の解明
Project/Area Number |
18570176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩本 亮 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10213323)
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Keywords | 細胞・組織 / 発生・分化 / 増殖因子 / 細胞間情報伝達 |
Research Abstract |
HB-EGFはEGFファミリーに属するヘパリン結合性の増殖因子である。我々はこれまでのHB-EGFノックアウト(KO)あるいは非切断型変異HB-EGFノックイン(UC)マウスなどの変異マウスを用いた解析から、これら変異マウスはいずれも心臓弁(動脈弁及び房室弁)の著しい肥厚症状を呈し、この肥厚は後期リモデリング過程での弁間質細胞の増殖昂進によるものであるということを明らかにしている。これらの結果から、分泌型HB-EGFは心臓弁形成過程、特に後期リモデリング過程において、間質細胞の増殖を負に制御しているということが示唆される。そこで本研究では、これまで「増殖因子」であると考えられてきたHB-EGFが、いかにして心臓弁間質細胞の増殖を「抑制」しているのか、その分子機構について明らかにすることを目的としている。 本年度の進捗状況は以下の通りである。 1)HB-EGF KO胎仔発生過程心臓弁における転写因子Snail発現低下の発見 HB-EGFによる間質細胞の増殖抑制機構解明の一端として、KOマウスの発生過程の心臓弁において発現が変動する種々の因子を探索したところ、これまで上皮間葉転換に重要であることが知られている転写因子の一つSnailの発現が、KOマウス心臓弁の、特にリモデリング過程において、著しく低下していることがわかった。 2)胎仔期心臓器官培養実験系の確立 HB-EGFによる間質細胞の増殖抑制とSnailの機能の因果関係を実験的に検証する目的で、この時期の心臓の器官培養系を立ち上げた。この系において、KO由来の培養心臓における弁間質細胞の増殖昂進、Snail発現の低下、及び、外来性HB-EGFによるこれらの異常のレスキューを確認している。 3)胎仔期心臓弁由来間質細胞培養実験系の確立 2)の器官培養系をさらに相補する実験系として、この時期の心臓弁由来間質細胞培養実験系を立ち上げた。この系において、KO胎仔心臓弁由来の培養間質細胞でも、間質細胞の増殖昂進及び、外来性HB-EGFによるこの異常のレスキューを確認している。 これらの実験系を駆使することで、心臓弁形成過程でのHB-EGFによる細胞増殖抑制において、SnailとHB-EGFが機能的にどのように関わっているのか、さらには、HB-EGFとその受容体EGFRからのSnail発現誘導までのシグナル伝達機構について、さらに検討していく予定である。
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