Research Abstract |
ポリコーム群は複合体を形成し標的遺伝子をエピジェネティック抑制する.本研究では,ポリコーム群による抑制機構を可視化によって理解する.申請時までに,可視化のための材料としてMel18-GFP,Ring1B-YFP,Edr2-CFPノックインマウスの作製に成功していた.本年度,これら融合タンパク質の評価とそれらが構築する核内構造体についての3次元解析および動態観察を行った. 1.分子評価 Mel18-GFP,Ring1B-YFPは正常に機能しているという結論に達したが,Edr2-CFPは異常であった. 2.3次元解析 (1)マウス胎児性線維芽細胞ではMel18-GFPおよびRing1B-YFPは,2つの異なる核内構造体,球状構造体(直径~0.5μm,数百個)と繊維状構1造体(網状に核内に広がる)を形成することがわかった.(2)一分子蛍光解析から大きさ上位30球状構造体に含まれる平均分子数は,Mel18-GFPで約50分子,Ring1B-YFPで約150分子であり,さらにこれら構造体に含まれる2種の分子数は定率であることが示唆された.(3)免疫染色実験から球状構造体は抑制的機能ドメインであることが示された.*Edr2-CFPはこの球状構造体を形成することができない. 3.動態観察 タイムラップス蛍光観察(15分間)から大きい球状構造体は安定的に存在することがわかった.一方,非常に小さい球状構造体は不安定であることがビデオレート観察(30ミリ秒毎)から明らかにされた.突如出現した球状体はたった0.5秒で消失する.繊維状構造体のダイナミクスは非常に奇怪である.ビデオレート観察においてそれは形を崩しながら拡散的な早さで動いているように見える.しかし,その動きには一定の方向性があり拡散性がない.レールのような構造体に沿って動いているように見える.現時点で,そのレール様構造体はクロマチンであると考えているが,その動態は確かにクロマチン上の分子の動きを反映しているのか,それとも分子結合型クロマチンの動き(揺らぎ)によるものなのかはまだ不明である.今後の課題にしたい.
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