2007 Fiscal Year Annual Research Report
WNTシグナルによる新規の極性形成機構の分子レベルでの解析
Project/Area Number |
18570199
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 邦明 Osaka University, 微生物病研究所, 特任研究員 (70311305)
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Keywords | 線虫 / 初期胚 / 極性 / 発生 / WNTシグナル |
Research Abstract |
細胞の非対称分裂は、多細胞生物における細胞種の多様性を生み出すのに必要不可欠な現象である。その非対称性(極性)を誘起するシグナル伝達経路の一つとして、Wntシグナルは広く研究されている。Wntシグナル経路の分子群は古くから同定されているが、その極性形成における作用機序については不明な点が多い。本研究課題の目的は、形質膜におけるWntリガンドの結合によるFz受容体の活性化が、最終的に核内のターゲット遺伝子の転写調節として変換されるシグナル伝達現象を分子レベルで理解することである。 本研究では、Wntシグナル伝達経路のその極性形成における作用機序について分子レベルでの解析を行なうため、以下の実験を行った。まず初めに新たなWntシグナル伝達経路の制御分子を見いだすため、この経路の主要なエフェクターであるβ-Cateninの温度感受性変異株を用いたサプレッサー遺伝学を行なった。サプレッサー株の多くは、β-Catenin分子内に2つ目の変異が入り、立体構造を再安定化させていると考えられるものであった。β-Catenin分子自身以外のサプレッサーとして、Wntシグナル経路の下流で働くPOP-1/TCF/LEFの機能低下型変異株が同定され、この系が機能していることが示唆された。さらに他のサプレッサーアリルについても遺伝子マッピングを続け、たんぱく質の分解経路で作用すると考えられる未解析の分子が同定された。 続いて、申請者の所有する温度感受性変異株ライブラリーの中から、このシグナル経路の動態に影響を与える2種類の変異株を同定した。1つはキネシンと相同性を持つ分子klp-18であり、POP-1/TCF/LEFの核内移行に重要であることが示唆された。もう1つの分子は、ユビキチン付加酵素複合体の1つのサブユニットelc-1であり、Wntシグナルの入力に関与していることが示唆された。これらの結果をもとに、線虫の分子遺伝学を用いてこれらの分子の作用機序の解析を行なった。ここで得られた知見は、Wntシグナル経路の研究に新たな展開を与えることが期待される。
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