2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞が対称分裂から非対称分裂へと転換・分化する際の差次的遺伝子発現の解析
Project/Area Number |
18570207
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中尾 啓子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70338185)
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Keywords | 神経上皮幹細胞 / 上皮間充織転換 / 神経前駆細胞 / 細胞周期 / ショウジョウバエ / 対称分裂 / 非対称分裂 / 細胞接着 |
Research Abstract |
ショウジョウバエ幼虫視覚原基OPC(outer proliferation center視覚外葉増殖中心)に存在する神経上皮幹細胞から神経前駆細胞へと転換を制御する分子機構を明らかにする目的で、遺伝子の差次的発現プロファイルを明らかにするにあたり、まず、転換の起こる時間帯と場所をできるだけ限定することにした。現時点でavailableな種々の分子マーカーを用いて時間経過を追って詳細に解析してたところ、神経上皮幹細胞と神経前駆細胞は細胞生物学的見地から質的に全く異なるものであること、及び、その質的違いにもかかわらず後者は前者から一細胞周期の間期と言うきわめて限定した時間に、神経上皮幹細胞と神経前駆細胞の境界領域で、bHLH型の転写因子である神経前駆細胞遺伝子Asenseの発現に端を発して、細胞接着装置の再構築を含む上皮間充織転換を経て、生じると言うことが明らかとなった。これにより、転換現象の起こる非常に限定された時期・場所に焦点を絞り発現プロファイルの時空間的分析を行うことで、神経上皮幹細胞から神経前駆細胞への転換の際に起こる遺伝子発現変化と細胞生物学的質的変化との因果関係を直接明らかにすることができると考えている。脊椎動物では、神経上皮幹細胞(これのみが真に等分裂によって幹細胞をexponentialにほぼ半永久的に増幅できる)の存在は想定されているだけで実体がほとんど明らかになっていないために、これまでの哺乳類神経幹細胞の研究は、ほとんど全て神経系前駆細胞(神経もグリアも生じうる未分化な前駆細胞neural stem cells=neural progenitors)のみについて行われて来たと言っても過言ではない現状を鑑みると、神経幹細胞から神経前駆細胞への転換の制御機構を、我々のショウジョウバエOPCの系で明らかにして、その知見を元に哺乳類の神経幹細胞へと遡ることは再生医学的見地からも非常に重要であると考えられる。
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