2006 Fiscal Year Annual Research Report
転移因子を指標としたイネ品種のゲノム安定性に関する評価
Project/Area Number |
18580001
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
貴島 祐治 北海道大学, 大学院農学研究院, 助教授 (60192556)
|
Keywords | イネ / ゲノム / コシヒカリ / トランスポゾン / 遺伝変異 / 産地間差異 / トランスポゾンディスプレイ / mping |
Research Abstract |
新品種を作り出すことが育種の本義である以上、一度作出された品種が市場に送り出された後には、もはや作り手としての育種の関与は殆どない。作出された品種は、均一で、安定した形質を持つものとして世に出る。しかし、最近様々な植物からゲノム中を動く(可動性)転移因子が多数発見されるに至って、申請者は、イネのような純系を重んじる作物でも品種内の均質性、少なくともゲノムの同一性を文字通り受入れることに疑問を感じてきた。特に長期間広い地域で栽培されている品種では同一のゲノム構成を維持するのは果たして可能なのであろうか。 コシヒカリは1944年,新潟県農事試験場において農林22号を母親,農林1号を父親に交雑された後代で,1956年,品種として登録された。最初の交雑から60年以上経ち,今なお各地で栽培されているコシヒカリの遺伝的な差違の存否に着目して,本年度の実験を企画した。特に,トランスポゾンに起因する構造変異が起こるのか否かに焦点を絞り,数種類のDNA型トランスポゾンの挙動を調査した。全国から集めた84系統を用いて,トランスポゾンディスプレイにより各系統を評価した。その結果,Mashu, KiddoおよびnDart等では,明確な転移の証拠は得られなかった。ただし,これら3つのトランスポゾンが84系統で殆ど多型を示さなかったことから,調査したコシヒカリは,他の系統との交雑などによる遺伝的な雑種の可能性は極めて低いことが示された。一方,mPingを調べたところ,高頻度に多型を示すバンドが得られた。これらのバンドはトランスポゾンが転移した結果生じたものであることが強く示唆される。得られた結果から,コシヒカリは,産地によって遺伝的に異なること,これらの遺伝的変異は60年に亘ってトランスポゾンが転移して蓄積した自然突然変異であることが結論づけられる。
|