2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18580013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 朋之 京都大学, 農学研究科, 助教授 (50224473)
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Keywords | イネ / 穂培養 / 乳白米 |
Research Abstract |
地球温暖化や早期・多肥栽培等によるイネ登熟期の生育環境不良、即ち、高温と多窒素栄養条件は、乳白化や穂発芽等の玄米品質低下をもたらし、近年特に問題となっている。これまで、乳白化の主原因は、光合成同化産物供給量(ソース)とその消費量(シンク)の量的アンバランスにあると考えられてきた。しかしながら、その発生メカニズムは十分に解明されているとは言い難く、生産現場では、不良条件を回避する対策が取られているに過ぎない。従って、その発生メカニズムを詳細に明らかにすることは、高温など不良環境下での品質低下を防ぐための重要な前提条件である。本研究では、申請者らが開発している穂培養法(イネの穂を糖を含む液体培地で培養し、ソースと生育環境を自由に制御することで登熟過程を単純化して解析できる手法)において、(i)培地に酸性水(亜硫酸水、クエン酸)または抗酸化物質グルタチオンを添加することにより、長期間の穂培養を試みた。その結果、いずれの処理区も対照区に比べ良好な成長を示す傾向にあったが、長期間成長を維持させるためには、更なる改善が必要と考えられた。一方、長期培養条件下ではないものの、(ii)高温・多窒素処理が玄米品質に及ぼす影響を多面的に評価した。既にコムギ等において穂発芽との関連が示唆されている転写因子Vp1に対する抗体を調製して、両処理を施した玄米中のVp1発現量を調べたところ、高温、多窒素処理でそれぞれ発現量が減少、増加した。このことは、両処理ともにαアミラーゼ活性は上昇するのに対し、高温処理でのみ穂発芽性と遊離糖含有率が増加することと密接な関連があるものと推察された。また、2D-PAGEとTOF-MSによる解析から、幾つかのストレス応答タンパク質が増加することが明らかとなった。引き続き、長期穂培養法の基盤の確立と、不良環境下での品質低下のメカニズムの解析をしていく予定である。
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