2008 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化に伴う高夜温による水稲登熱障害の水分生理学的機構解明
Project/Area Number |
18580020
|
Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
森田 敏 National Agricultural Research Organization, 九州沖縄農業研究センター暖地温暖化研究チーム, 上席研究員 (40391453)
|
Keywords | 細胞組織 / 植物 / ストレス / 糖 |
Research Abstract |
水稲登熟期の高夜温によって発生する玄米1粒重の低下のメカニズムを水分生理の視点から解明するために、高夜温で成長が抑制される胚乳細胞の圧ポテンシャルを昨年度に引き続きプレッシャープローブ法で測定した。測定は出穂後8-12日の10-13時、13-17時、22-24時の各時間帯に行った。また、出穂後10日目頃の玄米を用いて、サイクロメータ法で水ポテンシャル、浸透ポテンシャルを測定し、圧ポテンシャルを算出した。得られた主な結果は以下のとおりである。 1.プレッシャープローブ法により、高夜温区、高昼温区いずれでも出穂後日数が進むほど胚乳細胞の圧ポテンシャルが上昇し、特に9日目を過ぎる頃(含水率で75%を下回る頃)から急激に上昇した。この結果は、これまでの2ヵ年の結果と同様であった。 2.サイクロメータ法でも、3ヵ年を総合すると、玄米含水率が75%から65%にかけて下がるほど圧ポテンシャルが上昇する傾向が認められた。 3.プレッシャープローブ法で、夕方、高夜温区では高昼温区より、圧ポテンシャルが高いことが認められた。サイクロメータ法でも同様の結果が得られ、データの信憑性が高まった。 4.サイクロメータ法の測定結果から、高夜温区の夕方の圧ポテンシャルの上昇には浸透ポテンシャルの低下が伴っていることが認められた。このことは、高夜温区では、昼の低温で胚乳でのデンプン合成速度や呼吸速度が低下して、糖濃度が高まったことを示唆しているが、夜間、高温になっても圧ポテンシャルが高いことから、胚乳細胞の伸長が滞っている可能性が示唆された。 5.これらの結果は、高夜温区で浸透ポテンシャルの低下(糖濃度の上昇)により細胞伸長が誘導される条件にあっても、何らかの要因で細胞壁の弛緩が阻害されている可能性を示唆しており、今後の検討が必要である。
|