2007 Fiscal Year Annual Research Report
斑点米カメムシ類のイネ加害メカニズムに関わる植物香気物質の解明
Project/Area Number |
18580049
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀 雅敏 Tohoku University, 大学院・農学研究科, 助教 (70372307)
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Keywords | 斑点米 / カメムシ / 誘引 / 寄主選択 / イネ / 香気 / 寄主植物 / 嗅覚応答 |
Research Abstract |
アカヒゲホソミドリカスミカメは米に甚大な被害を及ぼす斑点米カメムシの最重要種である。本種はイネの出穂に伴い水田内に侵入するが、そのメカニズムは明らかでなかった。この解明は防除技術の確立に大きく貢献する他、新たな発生予察技術の開発に繋がると考えられる。昨年度の研究で、本種はイネ科雑草の香気に誘引されること、イネの誘引性はイネの生育段階により変化し、幼穂形成期の地上部全草および開花期の穂が誘引することを明らかにした。また、イネとイネ科雑草香気に対する選好性もイネの生育段階により変化し、イネ開花前はイネ科雑草を好むのに対し、開花期はイネをやや好み、それ以降は同程度に好むことも明らかにした。これを受け、本年度はイネ開花期における本種の水田内侵入メカニズムを物質面で解明するために、イネ香気成分の生育に伴う変化を部位別に分析した。SPMEによるヘッドスペース分析により、幼穂形成期の地上部全草および開花期穂の香気には共通してβ-caryophylleneが特異的に多く含まれていることを明らかにした。その他の物質としては開花期穂でmethyl benzoateが、幼穂形成期地上部全草および開花期穂でβ-elemeneの放出量が特異的に多かった。そこで、β-caryophylleneの本種に対する誘引性を、標品を用いて調査したところ、ゴムキャップに0.001%濃度で含浸させた本物質が雌に対して誘引性を示すことが明らかになった。本濃度で処理したゴムキャップから放出されるβ-caryophyllene量は、開花期イネ穂から放出される量とほぼ同量であることも、分析結果から明らかになり、β-caryophylleneが本種の水田内侵入に関与する物質の一つであることが明らかになった。物質面から本種の水田内侵入メカニズムの一部が解明されたことは、本種の防除技術の確立に向け大きく貢献するものと思われる。
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