2007 Fiscal Year Annual Research Report
植物の化学的防御に対する害虫の対抗適応に関する分子基盤的研究
Project/Area Number |
18580053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
刑部 正博 Kyoto University, 農学研究科, 准教授 (50346037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30293913)
深谷 緑 京都大学, 農学研究科, 研究員(COE) (80456821)
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Keywords | 寄主適応 / 二次代謝物質 / 解毒 / nicotine代謝 / グルコシルトランスフェラーゼ |
Research Abstract |
ミカンハダニとクワオオハダニのカンキツ成分に対する適応の相違が2種のハダニの寄主範囲を分ける鍵と考えられる。クワオオハダニのカンキツ利用を妨げる成分の部分精製を試みた。液体窒素で凍結したウンシュウ葉を粉砕後、エーテル抽出して得た抽出物をクワ葉片に塗布して幼虫を導入したところ、高率でクワオオハダニの死亡・逃亡を引き起こした。そこで、抽出物をシリカゲルカラムで分画し、クワオオハダニを用いて生物検定したところ、複数の画分で高い逃亡・死亡率がみられたことから、性質が異なる複数の活性成分の存在が示唆された。このうちミカンハダニへの作用が小さくクワオオハダニを高い比率で逃亡・死亡させる活性を持つ画分が特定された。鱗翅目害虫ハスモンヨトウにnicotineを与え、得られた糞抽出物をLCMS-IT-TOF分析した結果、nicotine 1-N-glucoside、cotinine、cotinine N-glucoside、nornicotineそしてcotinine 1-N-oxideをnicotine代謝物として同定した。従来、昆虫におけるnicotineの代謝として、チトクロームP450が関与する酸化による代謝が知られていたが、N-グルコシル配糖体化が初めて報告された。ハスモンヨトウ中腸の粗酵素液を調整し、nicotineとUDP-Glcとインキュベートすると、nicotine 1-N-glucosideを検出した。この結果、nicotineのN-グルコシル化反応はグルコシルトランスフェラーゼが関与すると示唆された。なお、この反応は貯蔵タバコを食害する鞘翅目タバコシバンムシにも観察された。昆虫におけるnicotine代謝経路として、N-グルコシル化反応は広く分布している可能性が示唆された。
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