2007 Fiscal Year Annual Research Report
窒素負荷による土壌酸性化を抑制する風化に関する研究
Project/Area Number |
18580063
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
馬場 光久 Kitasato University, 獣医学部, 講師 (70286368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 孝教 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (20155782)
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Keywords | 風化 / ケイ酸 / 窒素沈着 / ストロンチウム同位体 / カルシウム / 0層(堆積腐植層) / 酸生成量 |
Research Abstract |
大気由来の窒素沈着は土壌酸性化を促進する一方で,これに対して様々な酸緩衝作用が働く。スギ林下に発達した低木層を含む林床植生を刈取り,窒素動態を変化させることで,窒素動態と酸生成量および酸緩衝作用とのかかわりにについて検討した。これまで,刈取りにより林床植生の窒素吸収および水吸収が減少することで窒素溶脱量が増大することが示された。本研究により林床植生の刈取り区において,刈取らない対照区に比べて地温が夏季には2℃ほど高くなり,窒素無機化活性も高くなることが明らかとなった。このことも窒素溶脱量の増大に寄与していると判断された。加えて,刈取り区における地温の上昇による溶存有機炭素移動量の増大も窒素無機化活性に影響していることが示唆された。 増大した窒素溶脱量により窒素の形態変化に伴う酸の生成量も増大した。この酸の生成量とケイ酸溶脱量との間に最も高い相関関係が得られた。加えて,ケイ酸濃度とストロンチウム同位体比(^<87>Sr/^<86>Sr)との間に負の相関関係が見られた。ケイ酸および^<87>Sr/^<86>Srから,風化の酸緩衝作用に対する寄与が示された。また,土壌表面に堆積している堆積腐植層(リター層)の交換態カルシウム(Ca),全Ca量抽出液中の^<87>Sr/^<86>Srを分析した結果,より分解の進んだ層ほど高かった。これは,^<87>Sr/^<86>Srの高い降雨の影響をより長時間影響を受けたためと推察された。昨年度までの研究においてリターの乾物重量の減少に伴う交換性Ca含有:量の増加は,分解に伴い非交換性Caが交換態に変換されるものと考察してきた。しかし, Caとの相関性の高いストロンチウムについてこのような結果が得られたことから,単に非交換性Caが交換態に変換されるのではないことが示唆された。堆積腐植層からのCa供給は土壌酸性化を緩和しており,風化とのかかわりを検討する必要があると考えられた。
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