2007 Fiscal Year Annual Research Report
グリコサミノグリカン分解による連鎖球菌の宿主細胞侵入・感染機構の分子・構造生物学
Project/Area Number |
18580075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 渉 Kyoto University, 農学研究科, 准教授 (30273519)
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Keywords | 連鎖球菌 / 多糖リアーゼ / 細胞外マトリックス / 侵入・感染機構 / 不飽和グルクロニルヒドロラーゼ / コンドロイチン / X線結晶構造解析 / 硫酸化糖 |
Research Abstract |
Streptococcusに属する化膿性溶血型連鎖球菌は、多糖リアーゼを初発酵素として宿主細胞外マトリックス(グリコサミノグリカン:GAG)を分解することにより宿主細胞への侵入・感染を容易にすることが示唆されている。本研究では、連鎖球菌における宿主細胞への侵入・感染機構を明らかにするため、連鎖球菌ゲノムにコードされる機能不明タンパク質を、GAG分解に関して多糖リアーゼと協働する不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(UGL)であることを明らかにし、そのX線結晶構造を決定した。 大腸菌発現系より精製した連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)UGL(Sag UGL)は、多糖リアーゼ反応により生じたGAG(コンドロイチン、ヒアルロン酸〉不飽和糖を分解し、既知のBacillus由来UGLとは異なりGalNAc4位の硫酸化GAG不飽和糖にも作用する。本酵素は、硫酸アンモニウムを沈殿剤とした蒸気拡散平衡法により結晶化した。放射光実験施設SPring-8にてX線回折データを収集し、Bacillus UGLをサーチモデルとした分子置換法により、Sag UGLの高次構造を分解能1.8Åで決定した。活性クレフトについてSag UGLと不飽和コンドロイチン2糖が結合したBacillus UGLとの構造比較を行った結果、基質と相互作用するアミノ酸残基は両者で高度に保存されているが、GalNAcの4位に位置するアミノ酸残基で相違が見られた。すなわち、GalNAc4位の近傍にはBacillus UGLではヒスチジン210が、Sag UGLではアルギニン236が配置されている。また、この部位でのアラインメントを調べたところ、3種類の連鎖球菌(S. agalactiae, S. pneumoniae, S. pyogenes)では全てアルギニン残基であった。そこで、アルギニン236をヒスチジンやアラニンに置換すると、GalNAc4位の硫酸化GAG不飽和糖の分解が抑制された。従って、連鎖球菌の4位硫酸化コンドロイチンに作用する要因として、このアルギニン残基が重要であることが明らかになった。
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Research Products
(21 results)