Research Abstract |
植物が貯蔵器官細胞のプラスチドに蓄積する「貯蔵デンプン」は,高度に利用可能な極めて重要なバイオマスである.本研究では,穀類胚乳細胞が有する特異な「ADPグルコース(ADPG)の合成と輸送」システムに着目し,その詳細な解明と植物貯蔵デンプン集積量向上の新たな分子基盤を構築することを最終的な目的とした. 植物におけるデンプン合成の唯一のグルコース供与体(基質)はADPGであり,その合成はADPGピロホスホリラーゼ(AGPase)が担っている.多くの植物では,AGPaseはプラスチドに局在し,ADPGの供給を行うが,穀類種子胚乳細胞には,プラスチド局在型と細胞質局在型のAGPaseが存在する.したがって,穀類胚乳細胞は細胞質で合成したADPGをトランスポーターを介してプラスチド内に輸送する一連のシステムをもっている.このシステムを理解するため,本研究では(1)AGPaseの酵素特性の解析および(2)ADPGトランスポーターの機能解析を中心に進める. (1)AGPaseの酵素特性の解析:AGPaseは,大小サブユニットからなるヘテロ4量体で,イネゲノム解析から,大サブユニット遺伝子4種,小サブユニット遺伝子2種が明らかにされている.しかし,タンパク質レベルでの局在性は不明である.本年度は6種の遺伝子を取得し,遺伝子の器官特異的発現パターンから,細胞質型とプラスチド型AGPaseの各サブユニット構成を予測した.さらに,大小サブユニットの大腸菌発現系を構築した.次年度は,細胞質型とプラスチド型AGPaseを調製し,酵素特性の詳細を明らかにする. (2)ADPGトランスポーターの機能解析:イネADPGトランスポーターと推定されるBT1ホモログ遺伝子を単離した.また,大腸菌を用いて発現系を構築した.次年度は,BT1ホモログの取り込み特性の解析とランダム変異導入法による機能改変を目指す.
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