2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物「立ち聞き」(揮発性化合物感応)分子機構の解析-新規植物化学調節物質へ-
Project/Area Number |
18580105
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松井 健二 Yamaguchi University, 大学院・医学系研究科, 教授 (90199729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真野 純一 山口大学, 総合科学実験センター, 准教授 (50243100)
小川 健一 岡山県生物科学総合研究所, 細胞工学部門, 室長 (70344405)
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Keywords | 植物 / 生理活性揮発成分 / 化学生態学 / 立ち聞き現象 |
Research Abstract |
植物はストレスを受けると揮発性化合物を生成・放散する。こうした揮発性化合物を受容した近隣の健全植物は同じストレスが身近に迫っていると認識し、防御応答を誘導する。本研究ではこの揮発性化合物受容の分子機構を明らかにすることを目的とした。揮発性化合物受容機構の検討では無傷植物が(Z)-3-ヘキセナールを受容すると一部は気孔から、一部は葉組織全体から浸潤して体内に取り込まれ、直ちに(Z)-3-ヘキセノールヘと変換された。また、取り込まれた(Z)-3-ヘキセナールの一部は酸化されて4-ヒドロキシー(E)-2-ヘキセナール(HHE)へと変換されることを見いだした。HHEは酸化ストレスを受けたほ乳動物細胞で生成され、Keap1系を通じて防御遺伝子誘導を促進することが知られており、植物でもHHEが防御遺伝子誘導物質である可能性が示唆された。(E)-2-ヘキセナールと同様にα,β-不飽和カルボニル構造を持つメチルビニルケトンも同様の防御遺伝子誘導活性を示し、灰色かび病菌への耐性を付与することを認めた。このとき、グルタチオンS-トランスフェラーゼをレポーター遺伝子とすると、その誘導がプライミングされていることが示された。また、モデル植物としてリママメ、トマトを用い、葉ダニ食害を受けたリママメから放散される揮発性化合物に曝露された無傷リママメがキチナーゼタンパク質を誘導し、葉ダニへの抵抗性を獲得して葉ダニの産卵数を減少させること、ハスモンヨトウ幼虫食害特異的なトマト揮発性化合物が健全トマトのプロテアーゼ活性を高め、ハスモンヨトウ幼虫への抵抗性を高めていることを明らかにした。トマトの系ではプロテアーゼ活性の上昇は実際の食害後にのみ見られるため、プライミングを受けていると考えられた。一方で、揮発性化合物受容後の信号伝達経路にグルタチオンが関与していることが認められたが、揮発性化合物処理では細胞内グルタチオン酸化還元レベルはほとんど変化していなかった。
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Research Products
(11 results)