2006 Fiscal Year Annual Research Report
食物繊維摂取による小腸内ムチン分泌促進作用と食事成分の腸管吸収制御機構の研究
Project/Area Number |
18580116
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森田 達也 静岡大学, 農学部 (90332692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 公男 静岡大学, 農学部, 教授 (00126781)
松田 幹 名古屋大学, 農学部, 教授 (20144131)
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Keywords | ムチン / 食物繊維 / 水中沈定体積 / bulk-forming effect / 食事抗原 |
Research Abstract |
食物繊維は、構成糖や分子量の違いによる多様な化学構造に従い、異なる物理化学的性質(保水性、嵩、粘性、吸着性、発酵性)を示すが、これらの諸性質と生理機能との関連性を明らかにする場合、モデル素材の利用が時として有効である。著者らは、食物繊維の嵩形成能と消化管の相互作用を検索するツールとして発泡スチロール(Polystyrene foam : PSF)に着目した。PSFの示す物理化学的性質は、嵩形成能に限られ、PSF粉末(通常30-50メッシュで使用)のSVは、原料であるポリスチレンの発泡度を調節することで自在に制御できるからである。 発泡度30、60および90のPSF粉末(SVは、それぞれ8.0、15.0および22.0mL/g)をそれぞれ1%添加した飼料を調製し、10日間、ラットに摂取させたときの小腸内容物中ムチン量を測定した。ムチン量は、小腸内容物のエタノール沈殿画分について、SDS/PAGE上でのPAS染色(糖鎖染色)強度として、または、この画分中のシアル酸量およびO-結合性糖鎖当量として測定した。小腸内容物中ムチン量は、摂取したPSFのSVに比例して増加することが明らかとなった。この関係は、セルロース(SV=3.5)、コーンハスク(SV=5.0)、ビート繊維(SV=7.0)、小麦フスマ(SV=8.0)等の天然のIDFでも概ね成立することを確認した。 ムチンは腸上皮の杯細胞から分泌されるが、食物繊維の摂取はvillus当たりの杯細胞数を増加させた。この増加は、空腸にくらべ、食物繊維が滞留する回腸で顕著であった。本作用の発現には食物繊維の摂取開始から3-5日間を要するが、摂取中止から作用消失までの期間もほぼ同じであることを明らかにした。したがって、食物繊維によるムチン分泌促進作用は、腸上皮細胞のturn overと連動していると考えられる。しかし、SVの高い食物繊維が腸上皮とどのような相互作用を通じて杯細胞を増加(基礎分泌の増加を招く)させるのか、また高SVによる上皮組織への物理的刺激自体が個々の杯細胞からのムチン分泌を促進するのか、現在のところ明らかでない。いずれにせよ、小腸や結腸といった内容物の移動が蠕動運動に基づき進行する組織では、摂取する食物繊維の嵩が分泌促進の要因となることを明らかにした。
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