2007 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド形成抑制の分子論的基盤:オボアルブミン重合体における分子間β構造の役割
Project/Area Number |
18580119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 延行 Kyoto University, 農学研究科, 助教 (20252520)
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Keywords | 蛋白質 / 痴呆 / 脳・神経 / 食品 / 生体分子 / オボアルブミン / アミロイド / コンフォメーション変化 |
Research Abstract |
プリオン病や、アルツハイマー病は、生体の持つ正常タンパク質がコンフォメーション変化を起こして病態を呈することから、コンフォメーション病と呼ばれる。これらに共通する特徴として、原因タンパク質がコンフォメーション変化を起こし、別の分子とβシート構造を形成して重合することにより凝集体を形成することがあげられる。実際の病理変化は長期間にわたるものであり経過観察が難しいため、このコンフォメーション変化の原因を解明するには、タンパク質科学的なアプローチが必要となる。本研究では遺伝的分子異常等によりタンパク質凝集体を生じ、典型的なコンフォメーション病の原因となるセリンプロテアーゼインヒビターと相同性の高い卵白タンパク質、オボアルブミンの分子重合プロセスの詳細を明らかにすることにより、病的な分子重合を抑制する方策の開発に資することを目的としている。 本年度は、オボアルブミンの加熱による重合体形成が、アミロイド形成によるものであるかどうかを検討し、その特質を調べるとともに、オボアルブミン限定加水分解物を用いて、その会合と構造形成の機構を明らかにした。βアミロイドに特異的に結合する蛍光試薬ThioflavinTの存在下で、オボアルブミン重合体が発色することと、この重合体が走査型電子顕微鏡及び分子間力電子顕微鏡による観察において、繊維状の構造体を形成することから、オボアルブミンの加熱重合体は、βアミロイド構造を有することが強く示唆された。さらに、オボアルブミンR339T変異体について、その限定加水分解産物(nick型分子)を、尿素により変性させた後、尿素を希釈してコンフォメーションの再生を促したところ、野生型の分子とは異なる挙動を示したが、その過程で野生型と同一の経路を経ることがわかり、オボアルブミンの構造形成において、熱力学的に準安定な野生型構造を経由することが必須であることが明らかとなった。
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