2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18580122
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田村 隆 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40253009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 賢二 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80184711)
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Keywords | セレノリン酸合成酵素 / セレノシステイン / 亜セレン酸 / チオレドキシン還元酵素 / ギ酸脱水素酵素 / 放射性同位元素 |
Research Abstract |
セレンは,抗酸化作用,免疫賦活化作用,ホルモン調節作用,がん予防効果など,多くの有益な生理活性を示すミネラルとして知られている。人口構成が凄まじい勢いで高齢化しつつある先進諸国において,その多彩な生理活性が注目され,人々のQuality of Lifeを維持する上で必要なミネラルとして期待が高まっている。しかし,必要量の約10倍程度を摂取し続けると過剰障害が顕れるので,毒性と有用性の分かれ道が代謝経路のどこにあるのかを解明することが緊急の課題とされている。 本研究は,セレン代謝においてセレノリン酸の生成に至るまでの代謝機構に不明分な点が多いことに着目してそこに焦点を当ててきた。前年度までの成果の一つとして,亜セレン酸の還元代謝においてチオレドキシン還元酵素(trxR)の必要性を遺伝学子レベルで解明し,これに関わる酵素系を組み換え蛋白質として調製して生化学レベルでも解析を進めた。本年度は,trxRが触媒する亜セレン酸還元反応を速度論的に詳細な解析を行った結果125μM以上の濃度の亜セレン酸では,シグモイドな阻害様式を示唆した。つぎに放射性同位元素75^^Seで標識された亜セレン酸をこの酵素系に加えてSDS-PAGEに供した結果,trx蛋白質上にセレンが結合した複合体を同定することが出来た。セレンがtrxに運ばれて代謝を受けるという発見は新たな知見であり極めて意義深い。Trx-Seの有機態セレン形成は,trxRの触媒作用を必要としており,セレンはすでに2価にまで還元されていると考えられる。科研費申請の計画において想定していた有機態セレンの正体を思いがけない形として同定することが出来たといえる。 つぎにヒト由来のSps1とSps2の構造機能解析にっいては,従来の発想を根本から変えてSps1とSps2の共発現で何かが起きるかを検討した。意外にもSps1はSps2の触媒能を抑制することが示された。さらに酵母ツーハイブリッド系による検討の結果,Sps1とSps2の分子間で強い相互作用(結合)が認められた。これまでに生理的機能が不明であったSps1は,Sps2の機能を抑制するアンチザイムの働きを示すという新機能を同定した。これもセレノリン酸の生成速度を調節する因子がこれまで機能未知とされてきたSps1であることを同定できた成果は大きい。Trx結合セレンがセレノリン酸合成の前駆体であるという発見と同様にインパクトのある新知見であるといえる。
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Research Products
(10 results)