2006 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素関連タンパク質のクロストークによるアンドロゲン応答機構の解明
Project/Area Number |
18580127
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山地 亮一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (00244666)
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Keywords | 栄養学 / 低酸素 / アンドロゲン / アンドロゲン受容体 / 転写因子 / 前立腺癌 / ステロイドホルモン / 核内受容体 |
Research Abstract |
アンドロゲン受容体(AR)は正常または癌化した前立腺の細胞の増殖と分化に関与する遺伝子の発現を調節する転写因子として機能する。ARに結合するコアクチベーターは、最大あるいは適切なレベルのアンドロゲン活性を発揮するために必要である。解糖系酵素としてエネルギー産生に寄与するグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)は、前立腺癌細胞が低酸素環境下で生育するとき、転写レベルで発現が充進する。さらにGAPDHはARのアミノ末端ドメインに存在するポリグルタミン領域と相互作用し、またGAPDH mRNAレベルはラットの前立腺腫瘍の転移性と相関し、ヒトの前立腺腫瘍では後期の病理状態で増加する。前立腺癌を含む多くの癌細胞は低酸素環境下で生育することから、今回の研究においてGAPDHがARのコアクチベーターとして機能するかを検討した。前立腺癌細胞でGAPDHの発現が約1.8倍に増加したとき、リガンドに依存してARの転写活性は促進され、また前立腺癌のマーカータンパク質である前立腺特異的抗原の発現は増加した。免疫沈降実験により、前立腺癌細胞において内在性のARと内在性のGAPDHが同じ複合体に存在していることが判明した。しかしGAPDHはグルココルチコイド受容体やエストロゲン受容体のような他の核内受容体の転写活性を促進しなかった。さらに解糖系酵素活性を欠失した変異体GAPDHはARの転写活性促進能を保持していたが、核内移行シグナルを融合した変異体GAPDHは完全にAR転写活性促進能を失った。siRNAによりGAPDHの発現を低下させたとき、ARの転写活性が有意に低下した。これらの結果より、低酸素環境下で発現の亢進するGAPDHがARのコアクチベーターとして前立腺癌のアンドロゲンシグナル伝達系に寄与すると推測された。
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