2006 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種マメナシの個体群構造、遺伝子流動、遺伝的劣化を探る保全・分子生態学
Project/Area Number |
18580142
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
向井 譲 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (80283349)
|
Keywords | マメナシ / 絶滅危惧種 / 自家不和合性 / SSR / 遺伝的浮動 |
Research Abstract |
(1)研究目的 絶滅危惧種マメナシの個体群構造、遺伝子流動を明らかにすることを目的として、愛知県の個体群として尾張旭市の長池と名古屋市守山区の蛭池との2個体群、三重県の個体群として桑名市多度町みどりヶ池の1個体群を対象に、個体群内及び個体群間の遺伝的変異を調査した。調査地である、長池と蛭池とは約2km、長池及び蛭池とみどりヶ池とは約36km離れている。 (2)材料と方法 長池、蛭池、みどりヶ池の個体数はそれぞれ29(マメナシとナシの雑種であるアイナシ2個体を含む)、84、47である。各個体の葉からDNAを抽出し、PCR法により核マイクロサテライト(nSSR)マーカー4座、葉緑体マイクロサテライト(cpSSR)マーカー5座を増幅した(nSSRは両性遺伝、cpSSRは母性遺伝である)。増幅したマイクロサテライト領域の配列の長さによって遺伝子型を決定し、nSSRについてヘテロ接合度の観察値(H_o)と期待値(H_e)、近交係数(F_<IS>)、遺伝距離(D)を計算し系統樹を作成した。 (3)結果と考察 nSSRマーカーによるヘテロ接合度の値はH_o=0.571、H_e=0.659、F_<IS>=0.134(P<0.05)であり、遺伝的多様性は維持されているが、ホモ個体が過剰であることから近親交配が行われてきたと推察される。また個体群間の遺伝距離は長池-蛭池間が0.069、蛭池-みどりヶ池間が0.217、長池-みどりヶ池間が0.343であり距離による遺伝分化が見られた。一方、cpSSRマーカーでは長池の個体群が全て同一のハプロタイプであったが、蛭池と緑ヶ池とでは3種類のハプロタイプが確認された。個体数の少ない長池ではepSSRについて遺伝的浮動による多様性の消失が生じていることが確認された。
|