2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18580147
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川口 英之 Shimane University, 生物資源科学部, 准教授 (40202030)
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Keywords | 種子サイズ / 結実率 / 胚珠 / 花粉親 / 近交弱勢 / 自殖 / 虫害 / 散布距離 |
Research Abstract |
島根大学構内と京都大学芦生研究林のトチノキについて、種子数が異なる果実が、個体内と個体間でどの程度の変動を持って形成されるのかを測定し、その至近要因および究極要因について検討した。個体の多胎果実率は0から40%の範囲にあり、その高低は異なる繁殖年でも同様の傾向があった。平均値は11から13%の範囲にあった。多胎果実率は個体サイズに依存せず、同一個体内の花序サイズとも明瞭な関係はなく、資源の多少が多胎の原因であることを示唆しなかった。多胎果実内で花粉親は異なる場合もあり、花粉親が同じであるために優劣がつかずに多胎となったのではないこと、単子と多胎の花粉親の組成は似ており、自殖率および花粉親の組成は多胎に影響していなかった。これらの結果は、花粉の制限が多胎の至近要因でないことも示唆していると考えられた。しかし、自殖と他殖も含めた遺伝子型の異なる花粉親をもつ胚珠の競争を許さず、それらの共存を可能にしているシステムが存在することを示唆しており、このシステムは花粉が制限された場合に自殖を保証するものとして機能し、胚珠の競争ではなく共存についての新たな知見と意味を与えるものと考えられた。 トチノキの果実は多胎になる場合、種子1個の重量が小さくなることなく、また種子間で差が生じないように、複数の種子を成熟させていた。果皮は相似形的に厚くなるのではなく、種子重あたりの果皮重のコストは多胎のほうが有意に低くなった。しかし、落下前の虫害率は多胎のほうが有意に高かった。ネズミなどによる二次散布の距離に有意な差はなかったが、種子の重量と距離には有意な正の相関があった。単子と多胎に係わりなく同じ重量の種子を生産する傾向は、二次散布の距離が種子の重量に依存していること、トチノキの更新場所が下層植生の多い渓畔部に限定されていることなどに関係していると考えらえた。
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Research Products
(1 results)