2008 Fiscal Year Annual Research Report
ダム構造物が流域の物質循環・生態系に与える影響とその修復手法の開発
Project/Area Number |
18580151
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
柳井 清治 Hokkaido Institute of Technology, 空間創造学部, 教授 (20337009)
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Keywords | 治山ダム / スリット化 / 土砂流出 / 渓流生態系 / 木製ダム / 淵 / サケ科魚類 / 渓流修復 |
Research Abstract |
2005〜2007年度にスリット化された留萌管内の渓流において,河川地形変化と土砂流出について調査を行った.施工の結果,ダム下流部に配置された巨石は上流から流下した小礫を貯留し,連続的な河床面を形成する効果が見られた.またダムの未切り下げ区間と切り下げ済み区間において礫径組成に著しい違いがみられた.切り下げ実施区間では,礫径は変動幅が大きく多様性があるが,未切り下げ区間の礫サイズは,砂や泥,岩盤が分布する傾向がみられた.切り下げによる多様な礫径の存在は,上流部からの礫移動がスムーズに行われた結果である.また上流からの多様な礫が流下することにより,河川に蛇行が生じるなど河川流路の多様性が生じていた.こうした切り下げ施工によるコストは魚道設置の10分の1程度であり,将来的にダム渓流環境修復を行う上での工法の一つになると考えられた.つぎに2000年にコンクリートダムによらない構造物の設置を行った網走管内の渓流において,木製構造物の機能や耐久性について調査を行った.設置後8年を経過しているが,河川内においては木製構造物は十分耐久性があることが実証された.その防災機能に関しては,河床勾配を緩和し縦浸食を抑止し,流木捕捉により流木災害を防ぐという点から有効であった.また生態的機能については,淵の増加は魚の生息場の増加に寄与しており,ヤマメなどの魚類も他の区間より高密度であることから,この木製構造物は魚類にとって良好な生息環境を作り出すことができると考えられた.総合的に見ると,渓流生態系において木製構造物は防災機能と生態系保全を調和させる修復工法であるといえる.
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