2006 Fiscal Year Annual Research Report
窒素および炭水化物の貯蔵機能の評価に基づくブナ林堅果の豊凶作のメカニズムの解明
Project/Area Number |
18580155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
韓 慶民 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (40391180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壁谷 大介 独立行政法人森林総合研究所, 木曽試験地, 研究員 (30353650)
千葉 幸弘 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 室長 (90353771)
角張 嘉孝 静岡大学, 農学部, 教授 (60126026)
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Keywords | 結実豊凶作 / 生理的統合 / 炭水化物 / 窒素 / 光合成 |
Research Abstract |
樹木の結実豊凶は古くから世界中に知られている現象である。近年、枝や幹など各器官の非構造性炭水化物の変化から資源適合仮説を検証する研究例があったが、この仮説を裏付けるデータとしての研究事例はほとんどない。本研究では、2005年豊作になった苗場山ブナ林(海抜550、900、1500m)を対象に、(1)結実による樹体内窒素の貯蔵機能への影響およびその後窒素循環系の回復過程、(2)結実による樹木各器官の非構造性炭水化物量への影響、(3)結実による光合成生産への影響を明らかにし、ブナの結実豊凶メカニズムを解明することを目的とした。 2005年に豊作になった苗場山ブナ林が2006年に不作となった。豊作の2005年に形成した冬芽が三つの海抜ともすべて葉芽であったが、その翌年550、1500mのブナ林では花芽が分化された個体は観察された。花芽のほうが葉芽より窒素濃度が高かった。また、豊作になった2005年に比較して、翌年の2006年には冬芽の乾重量はすべでの海抜において重かった。ブナのシュート伸長が固定成長型であり、花芽の分化や冬芽あたりの葉の枚数などは7月頃に決まられている。豊作年の7月は種子への窒素転流の最盛期にもあたることから、種子生産への窒素および炭水化物の優先分配は冬芽への窒素供給制限要因となり、花芽を分化できなくなったと考えられる。従って、豊作した翌年は不作になる。さらに、豊作年の翌年に形成した葉芽の窒素濃度は豊作年の葉芽と比べて、同じ値を示したが、乾重量が増加したため葉芽あたりの窒素量が多かった。これは、葉原基の窒素濃度が一定であり、葉原基の数によって葉芽の窒素量が決定されると示唆された。
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