2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホタテガイ養殖漁場における付着珪藻の光合成特性と基礎生産力の再評価
Project/Area Number |
18580173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 絹子 東北大学, 大学院農学研究科, 助手 (90191931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 浩一 東北大学, 大学院農学研究科, 助教授 (70111268)
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Keywords | ホタテガイ / 付着珪藻 / 光合成 / 基礎生産力 / 養殖漁場 / 再評価 / 環境構造 / ミクロ物質循環 |
Research Abstract |
ホタテガイ養殖漁場として、青森県陸奥湾と宮城県女川湾の2箇所を選び、ホタテガイの食物摂取実態の解析と付着珪藻の生産構造について調査を行った。陸奥湾のホタテガイは垂下式カゴ養殖、女川湾では耳釣り養殖が行なわれており、養殖施設が異なる。 調査は毎月1回、漁場の環境構造を知るために、水温、塩分の観測、海水中のクロロフィルa量、CN量の分析を行なった。並行してホタテガイの消化管内容物の組成、海水中の植物プランクトンの組成、養殖カゴやロープ、ホタテガイ殼表面に付着している珪藻の種類組成について、生物顕微鏡並びに電子顕微鏡を用いて観察を行なった。また、採集したプランクトン、付着珪藻、およびホタテガイの筋肉について、炭素・窒素安定同位体比の分析を行なった。 カゴ養殖におけるホタテガイの消化管内容物の多くは付着珪藻であり、浮遊性のものは少なかった。これは季節を問わず見られた傾向である。一方、女川湾の耳釣り養殖ホタテガイの消化管内容物には浮遊珪藻の方が多かった。ただし季節によっては付着珪藻の割合が高く、特に夏季は海水中の植物プランクトンの密度が低下していることと連動して、付着珪藻への依存が高くなっていた。 ホタテガイは懸濁物食者であるが、自身の殼付近に存在する海水中から食物を摂取しており、カゴの中に収容されている場合には、カゴから剥がれ落ちた付着珪藻も摂食することが分った。一方、海水中に高密度に存在しているプランクトンでも群体性で200μ以上のサイズは摂取できないことも分った。すなわち、食物の評価としては、量的な評価だけでは不十分であることを示している。更に重要な点は、養殖施設周囲の基礎生産者である付着珪藻の生理生態特性を考慮した漁場生産力を推定する必要があることである。また、植物プランクトン組成を見ると、水深による種類組成の変化は少なく、また、付着珪藻が混在する割合も小さいことがわかり、カゴ周辺におけるミクロな物質循環構造が存在している可能性が示唆された。
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