2006 Fiscal Year Annual Research Report
貝類の貝殻に穿孔する多毛類による人為的生物移動の影響の解析
Project/Area Number |
18580174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大越 和加 東北大学, 大学院農学研究科, 助手 (20233083)
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Keywords | 穿孔性多毛類 / 増養殖 / 移入種 / 人為的影響 / Polydora / 貝類 |
Research Abstract |
国内の貝類の貝殻には20種以上の穿孔性多毛類が報告されているが、その中で増養殖上、貝類への商品価値の低下、貝類の成長の低下、斃死のリスク等、種々の点で最も注目されている種はPolydora uncinata, Polydora brevipalpa, Polydora sp.である。それら3種の中で、Polydora uncinataの有用貝類への侵蝕が近年世界的に懸念されているが、本種のオーストラリアのアワビ貝殻への穿孔が確認された。本種のアワビへの侵蝕頻度、侵蝕発生状況、生物学的・生態学的特性について解析した。また、同時に人為的な増養殖貝類のみならず天然の貝類への侵蝕状況について調べた結果、潮間帯から潮下帯に分布する貝類にも広く穿孔していることが明らかになった。本種がもともとオーストラリア沿岸域に生息する可能性が示唆されたが、同時に、本種の寿命、生殖活性、幼生発生様式より、別の海域から移入された後に閉鎖的な空間で効率よく個体群を増加させた結果である可能性も示唆された。オーストラリアと日本に生息している本種の成体のサイズ、受精卵のサイズ、幼生の発生様式を比較したところ、ほぼ同様であった。 日本は世界的な増養殖先進国であるため、多くの貝類が日本に移入され、同時に輸出している。そのような人為的影響が未だ比較的少ない海域について、モニタリングを開始する意義と必要性を認め、オーストラリアの多毛類で試み始めた。増養殖対象の貝類のみならず、天然の貝類を採集しその貝殻に穿孔していた多毛類を調べた結果、養殖貝類の貝殻に穿孔していた多毛類と異なる種が多く確認された。それらは元来その海域に分布していた種と思われ、他の海域から人為的に移入された種と区別することができた。今後は、人為的な影響が読み取りやすい増養殖貝類の貝殻に穿孔する多毛類を通して、急速に広まる海洋の移入生物の影響を正確に認識し考察を試みる。
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Research Products
(2 results)