2007 Fiscal Year Annual Research Report
貝類の貝殻に穿孔する多毛類による人為的生物移動の解析
Project/Area Number |
18580174
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大越 和加 Tohoku University, 大学院・農学研究科, 准教授 (20233083)
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Keywords | 人為的影響 / 穿孔性多毛類 / 増養殖事業 / 移入種 / Polydora / 貝類 |
Research Abstract |
今日、ますます海洋での食糧生産が期待される一方、人為的な影響により沿岸域の生態系が変化し、漁業資源の安定した供給が危ぶまれている。その原因のひとつに、増養殖事業に伴い、自然の速度をはるかに上回る速度で物質や生物が移動している現状が挙げられる。わが国では増養殖が盛んで海外との輸出入も盛んに行われている水産業、増養殖事業の先進国である。将来的に持続可能な食料の供給を実現していくためには、生物の急速な人為的移動が自然の生態系に与える影響について解明し、科学的根拠に基づく対策へと繋げる必要がある。 増養殖対象となり、さまざまな海域に移動する日本の貝類の貝殻には穿孔性の多毛類が見られる。その中で水産学的に問題となり、調査が必要と考えられる1種、Pollydora uncinataは、日本はもとよりオーストラリア、チリの陸上の養殖アワビ施設でもその被害が懸念されているが、新たに南アフリカに生息している穿孔性多毛類の種との関係が問題となってきた。また、中国産の貝類の貝殻からも新たに多毛類が摘出され、調査中である。日本では、新たに陸奥湾に出現した多毛類についても検討中である。このように、世界中の天然、増養殖貝類の貝殻から、新規に、またはそれまで報告されていなかった多毛類の種が摘出され、検討され続けている。水産学的に問題となり得るそれらの種のオリジンはどこで、どのような経緯で移動されたのか、また、産卵期、寿命などの生活史や発生様式を含む生態学的な観点から穿孔されたホストの貝類や生態系に与える影響の有無等、グローバルな視点から問題となる種を整理し、早急に調査・検討することが望まれる。そこから見えてくる人為的影響についての考察が期待される。 オーストラリアの穿孔性多毛類についての結果は、アメリカで開催された国際多毛類学会議で発表され、同時に国際誌に掲載される予定である(2008年、in press)。国内の海産の移入種問題については、渦中の日本水産学会誌に特集を企画し、水産庁、国土交通省、環境賞も参画し、水産業の現状を認識し、今後の対策へと繋ぐ成果を出した。
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Research Products
(5 results)