2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18580178
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
横田 賢史 Tokyo University of Marine Science and Technology, 海洋科学部, 助教 (00313388)
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Keywords | 感染症 / 水産学 / 数値シミュレーション / リスク評価 |
Research Abstract |
(平成19年度に行った研究実績を記入) 平成19年度は過去の感染実験結果の量的解析を行い、その伝播メカニズムを解明することを目的として次の2つの観点から研究を行った。 (1).平成18年度に開発した個体ベースの伝染病モデルをシンプルなランダム分布の感染モデルに改良し、ニジマス稚魚を寄主とするイクチオホヌス症同居感染実験結果と比較した。感染実験では(初期)感染魚を1尾、5尾、10尾と未感染魚を入れた水槽(飼育魚総数:60尾)をそれぞれ2区設置され日間死亡尾数が観察された。102日間の観測で初期感染魚および未感染魚(実験後感染)のいずれも死亡までの日数(死亡日数)の分散が大きかった。同様の条件設定で個体ベースモデルを構築し、感染については水槽内の未感染魚と感染魚の2次元格子目状の位置関係によって感染成立の有無を表し数値シミュレーションを行った。しかし、観察された死亡日数のばらつきは位置関係のみを考慮したモデルでは十分に再現されなかった。そこで、さらに感染成立と感染期間に確率変動を加えてシミュレーションした結果、確率変動がわずかでも実験で観察された死亡日数のばらつきが再現された。以上のことから感染率が低く症状にばらつく場合は流行の不確実性が顕著に現れることが示唆された。 (2).集団レベルの伝染病モデルを伝播・流行の時間スケールという視点から数理的に再検討した。2つの典型的な伝染病モデルの比較および数値シミュレーションにより「世代(平均潜伏期間)」を基本単位とする時間スケールでは決定論的な予測が可能である一方で、世代時間に比べて相対的に短い時間スケールでは感染の不確実性が顕著に現れるために予測不能となることが明らかになった。世代時間に基づいて(1)のイクチオホヌス症同居感染実験データを解析した結果、平均世代時間は51日以上が妥当となり日ごとでの観察は不確実性が高くなることが示唆された。
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