2007 Fiscal Year Annual Research Report
貧酸素化に伴うクラゲの増加が沿岸域の生態系に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
18580181
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠井 亮秀 Kyoto University, 農学研究科, 准教授 (80263127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小路 淳 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (10397565)
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Keywords | 海洋生態 / 海洋保全 / 水産学 / 環境変動 |
Research Abstract |
広島湾奥部に設けた10-13箇所の定点において2007年7-9月に月一回の割合で,水温・塩分・溶存酸素濃度、クロロフィル濃度の測定と,プランクトンネット(口径45cm,目合い0.3mm)の鉛直曳を行った.採集されたミズクラゲの傘径と質重量を船上で測定し、標本の一部を5%海水ホルマリンで固定し、また一部を冷凍して持ち帰った。実験室において魚卵および稚仔魚の同定と計数を行った。またミズクラゲの窒素・炭素安定同位体比をコンフロシステムにより測定した。 結果(1)ミズクラゲ重量と底層の溶存酸素濃度の間に負の相関が認められた。 結果(2)ミズクラゲは湾北部で多く湾南部で少なかった。一方、魚類プランクトンの主要構成種であるカタクチイワシの主分布域は湾南部であり、クラゲの主分布域とは水平的分離が認められた。 結果(3)植物プランクトン濃度が高い海域はクラゲの密度が高い海域と一致していたが、動物プランクトンの密度が高い海域とは一致していなかった。これは植物プランクトンから動物プランクトンへ流れるはずのエネルギーフローの一部がクラゲに流れていることを意味しており、クラゲが沿岸生態系に影響を及ぼしていることを示唆している。 結果(4)ミズクラゲの窒素・炭素安定同位体比は6-7月に比べて9月に高くなった。9月はカニ類の幼生が産まれてくる時期であるが、クラゲの多い海域は少ない海域に比べて、カニ類の密度の増加量が少なかった。これらより、ミズクラゲはカニ類の幼生を捕食している可能性が高く、浮遊生態系だけでなく底生生態系にも大きな影響を及ぼしている可能性がある。
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Research Products
(2 results)