2006 Fiscal Year Annual Research Report
飼育下におけるカタクチイワシ仔稚魚の行動特性の個体発生
Project/Area Number |
18580183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60324662)
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Keywords | カタクチイワシ / 行動 / 個体発生 / 資源 / 被食 / ミズクラゲ / 群れ / 逃避 |
Research Abstract |
京都府舞鶴市の千歳定置網および田井定置網に入網したカタクチイワシ親魚約200個体を親魚として,自然産卵により受精卵を得て,以下の飼育実験を行った. 1.水温別飼育実験 カタクチイワシを18,22および26℃の3水温で飼育した.50日齢時点で,18℃区と22℃区の平均体長はそれぞれ16.8mmおよび23.0mmとなった.26℃区は50日齢に達する以前に全滅した.本種は春から秋までの長期にわたって産卵するものの,少なくとも春季産卵群では最適な水温のレンジは狭いものと考えられた. 2.クラゲによる被食実験 ミズクラゲを3個体収容した水槽にカタクチイワシを1個体ずつ収容し,捕食されるまでの時間を観察した.その結果,体長10mmを越えても3分程度で捕食される個体が見られた.同様の実験をマアジおよびマサバで行ったところ,6mmを越えた仔魚が捕食されることは希であった. 3.ミズクラゲ胃内容物の観察 若狭湾沿岸で採集されるミズクラゲの胃内容物を観察したところ,魚類ではカタクチイワシ,マアジ,マダイ,およびアナハゼ類の仔魚が見つかった.個体数はカタクチイワシが圧倒的に多く,また体長10mmを越えた被食個体の出現する魚種はカタクチイワシのみであった. 一連の実験から,カタクチイワシはクラゲ類の食害を極めて被りやすいことが明らかとなった.本種のこうした特性は,透明で見えにくい構造に依存したシラス型仔魚の対捕食者戦略に起因すると考えられる.クラゲ類の発生が近年続くにも関わらず,本種の資源が比較的安定しているメカニズムについて,対捕食者行動・成長および繁殖戦略の側面から解明してゆくことが今後の課題である.
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