Research Abstract |
1. 親魚の養成 舞鶴市田井の定置網より入手したカタクチイワシ成魚400個体を,直径4mの水槽2面に分けて収容し,異なる海水温で飼育した.いずれの水槽でも,水温が20度を越えた時点で自然産卵を開始した.得られた受精卵をもとに以下の飼育実験を行った. 2. 遊泳速度の個体発生 ふ化後10-50日齢,平均体長6-36mmのカタクチイワシ仔稚魚を材料として,瞬発および巡航遊泳速度の測定を行った.巡航速度は仔魚期には体長の1-2倍/秒,体長25mmの変態期以降には体長の4倍/秒程度であり,これはマアジよりは速いものの,マサバよりは遅かった.また瞬発速度は,仔魚期には体長の5-9倍/秒,変態期には20倍程度であり,マサバとほぼ同程度で,マアジよりは遅かった. 3. 群れ行動の個体発生 飼育水槽中における群れの形成過程を,頭位交角,個体間距離,および乖離遊泳指数を指標として解析した.その結果,本種では体長20mm前後の仔魚期後期から群れ行動が発現することが明らかとなった. 4. ミズクラゲによる捕食 ふ化後10-40日齢,体長6-27mmのカタクチイワシ仔魚を材料として,ミズクラゲに対する被食の程度を検討した.その結果,本種の仔魚では体長20mmを越えても捕食される個体がおり,体長6mmを越えたら捕食されないマアジやマサバでの結果とは大きく異なることがわかった. 一連の結果から,本種の仔魚は透明で見えにくいことに依存した対捕食者戦略をとっていることが予想された.今後は濁りを与えた水槽で,魚類またはクラゲ類の捕食者と遭遇した際の被食について,実験により調べる予定である.また,天然海域でのクラゲによる被食の程度についても検討する.
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